一席は神津キリカさん/佳作に宮古2人
第1回宮古島文学賞発表
第1回宮古島文学賞(市文化協会主催、市、市教育委員会共催)の入賞作品の発表が26日午前、市役所平良庁舎で行われ、一席には神津キリカさん(34)=東京都=の「水靴(すいか)と少年」、二席には小池昌代さん(58)=東京都=の「匙(かひ)の島」がそれぞれ選ばれた。宮古島市在住の森田たもつさん(58)の「蝉衣(せみごろも)に吹く風」、宮古島市出身で北中城村在住の玉元清さん(71)「笛吹川」、鹿児島県出身の長野和夫さん(75)=千葉県=の「笹舟」の3作が佳作になった
神津さんは、初めて応募した作品で受賞した。
作品はファンタジーで、架空の島で少年が水の上を歩くことができる靴を旅の行商人からもらう。少年はそれを履いて、夜の海を歩き、幻想的な雰囲気に出会ったりする。
ある日少年は、海に転落した祖父であり島の長(おさ)を水靴を履いて助けたが、それが島の掟を破ったということで追放される。
追放は島の長の判断であり、少年に手渡した手紙には「追放は私が存命中のみ有効で、私が死んだ後は島に戻るか、旅するか自由に決めろ」と決断を迫られる。
選考委員長の椎名誠氏は、神津さんの「水靴と少年」について「読む人の年齢層や性別を選ばない。子供から老人まで幅広い人が読める。これはものすごい力を持っており、金字塔に値する要素」と評価した。
選考委員のもりおみずき氏は「水の上を歩く場面などドラマチックに描かれている。オリジナリティーがありファンタジーがあると同時に、現代の人の生き方まで暗喩(あんゆ)のように透けて見える作品」と称賛した。
授賞式は2月24日、ホテルアトールエメラルド宮古島で行われる予定。一席の神津さんには賞状と副賞50万円が、二席の小池さんには賞状と副賞10万円がそれぞれ贈られる。
「島」をテーマした短編小説を募集したところ、国内外から229点(宮古島市からは36作品)の応募があった。第1次、第2次選考会を経て、8作品が最終候補に選ばれた。
選考会は25日夕、市内ホテルで行われた。
入賞作品発表の席上、あいさつした下地敏彦市長は「宮古の新しい文学の方向として大切に育てていきたい」、市文化協会の大城裕子会長は「地元の人たちには、島には豊かな世界が広がっていることを、全国の人たちには、文学的な土壌を持った島があるということをそれぞれ知ってもらいたい」と述べた。
一席の神津さんの作品は、市文化協会のホームページに掲載予定。