傷害罪の女性に無罪判決/地裁平良支部
「被害者供述、信用性ない」
知人女性を角材で殴りけがを負わせたとして、傷害罪に問われた女性(44)=宮古島市=の判決で、那覇地方裁判所平良支部(橋口佳典裁判官)は2日、女性に無罪を言い渡した。
女性は2016年11月16日午後5時50分ごろから同7時10分ごろまでの間に、宮古島市の自宅で、知人女性(当時43)の尻を角材で少なくとも109回殴打する暴行を加え、臀部(でんぶ)打撲や臀部皮下出血など約1カ月の治療を要するけがを負わせたとされる傷害容疑で、同年11月24日に宮古島署に逮捕された。
逮捕された女性は逮捕後、一貫して無罪を主張。裁判では、目撃者がいないことから、暴行を受けたとされる知人女性の供述の信用性が争点となった。
判決では、暴行を受けたとされる女性の供述には、暴行された現場の状況と合致しないという不合理な点があり、裏付けに乏しく内容も不自然だと指摘した上で「その信用性を肯定することができない」とした。
裁判で検察側は、客観的な証拠関係と、信用できる知人女性の証言を踏まえれば、女性が暴行に及んで負傷させたことは明らかであると主張。弁護側は、女性は暴行を加えておらず、被害申告は虚偽であり無実であって無罪であると反論した。
橋口裁判官は、暴行を受けたとされる知人女性の供述について「一定の特徴的なストーリー性もあり、それなりの臨場感もある」としたものの「詳細に見ると、供述には重大な疑問があり信用性を肯定することができない」とした。
具体的には、暴行されたと主張する部屋には荷物が置かれており、暴行に使ったとされる角材を、思い切り振ろうとすると荷物などに当たってしまい、思い切り振ることは部屋の広さなどから困難であると指摘。このことから「知人女性の供述の信用性を大きく疑わしめる事情である」と述べた。
また、暴行されたという知人女性は、女性に尻を109回叩かれるまで、逃げ出しもしなかったことについては「普通に考えると不自然である」とし、検察側が女性から暴力を振るわれるなどする中で、経済的、精神的に大きな支配的影響を受けていた状況にあったと強調したことには「そのような事実関係を裏付けるような証拠はない」とした。
暴行を受けたとされる知人女性が、女性の家を退去してから、ヒッチハイクした車両の後部座席シートに、この知人女性の血痕が付着していたことについては、2人の医師の証言を基に「自傷行為の可能性は完全には否定されていない」とし「自傷行為とすると不自然ではあるが、その可能性を認めている」と述べた。
橋口裁判官は「(暴行を受けたとされる)知人女性の供述以外の証拠関係をもって被告人を犯人と認定することはできない」と結論付けた。
県警本部は「捜査は適正に行われたと認識しているが、判決文を精査していないので現時点ではコメントは差し控えたい」との見解を発表した。