海岸に大量の漂着ごみ/山口教授が21年間調査
8割以上が中国製/自然環境へ深刻な影響
宮古、八重山の海岸に流れ着く漂着ごみを21年にわたり調査している防衛大学校名誉教授の山口晴幸氏が10日、本社を訪れ調査結果を公表した。宮古島、池間島の北海岸に流れる漂着ごみは増加傾向にあり、国籍が判別されるごみの8割以上が中国製と見られる。自然環境への深刻な影響リスクが危惧され、国は海洋越境ごみの問題に注視し、積極的な制御防止策に向けた実践的な対応をすべきだと強調した。
山口教授は、3月9日から4月9日まで八重山、宮古の7島47海岸、21・41㌔を歩いて調査した。この海岸は21年間にわたり毎年、定点調査を実施している。
調査の目的は、漂着ごみの種類及び国籍等をカウント調査し、経年的な増減や近隣アジア諸国(主に中国)からの海洋越境ごみの実態把握を試みる。また、流木の漂着実態と海岸生態系への影響リスクを検討するもの。
今回の調査の結果、冬から春先に打ち上がる膨大な量の漂着ごみと大小さまざまな流木(大きいものは長さ数㍍、経30~40㌢)の大量漂着によって、多くの海岸では浜一面に覆い尽くされ、足の踏み場もないような状況だったという。特に与那国島、西表島、石垣島の北海岸は大量の流木が流れ着き深刻な状況という。
池間島の北部から東平安名崎に掛けての東側に面した海岸では、流木は懸念されるほどの状況ではなかったが、相変わらず大量の漂着ごみの実態が繰り返されており、海岸域の自然環境への深刻な影響リスクが危惧された。
八重山・宮古の海岸では、ペットボトル等の廃プラスチック類からなる中国製ごみを主体とした近隣諸国(韓国、台湾、マレーシア等)からの漂着ごみが大半を占めている。特に中国製の海洋越境ごみが年々増加する傾向がうかがわれる。
山口教授は「県や市町村による近隣国への対応は難しく、年々深刻化する状況を踏まえ、国は積極的に制御防止対策に向けた実践的な対応が望まれる」と語った。
また、今回は環境省のホームページで、鉛が溶出すると指摘されている青色棒状フロートと樽状フロート(いずれも中国製小型フロート)の調査も行った。宮古島(池間島含む)の9海岸で、棒状フロートが6722個、樽状フロートが2528個確認された。
紫外線が強く、沖縄の海岸域では、漂着プラスチック類ごみの堆積、放置が劣化・破砕を促進させ、マイクロプラスチックの生成・供給に拍車を掛けている。今回の調査でも、微小プラスチックの大量漂着の実態を多くの海岸で確認している。防止対策は、漂着ごみの堆積・放置を許さない迅速な回収・除去に尽きると山口教授は語った。