次世代に安全な水を/地下水講演会・シンポ
過度な開発行為に警鐘/保全向け3項目決議
「大丈夫?宮古島の地下水-考えよう、いのちの水、島の未来-」をテーマにした講演会・シンポジウム(主催・同実行委員会)が1日、市中央公民館で行われた。講演者やパネリストが大型リゾートや陸上自衛隊の新基地建設などの開発行為により、水需要の増加のほか、水質汚染の可能性についても指摘し警鐘を鳴らした。また、地下水保全に向け3項目の決議文も採択した。会場には200人を超える市民が訪れ、地下水とともに生きる社会づくりの大切さを学んだ。
主催者あいさつで、岸本邦弘実行委員長は「宮古島は安全な地下水が無ければ生活できない。地下水を守るために私たち市民が多くのことを学ぶ必要がある。きょうは楽しみながら地下水について学んでほしい」と呼び掛けた。
講演会では、市の前地下水審議委員で現在、八重山農林高校教諭の前里和洋氏が「宮古島の地下水について」を演題に講話した。
島民の飲料水に活用される白川田流域の湧水量が豊富な理由について、前里教諭は「自然の不思議が重なった『天の恵み・命の泉』だと思う」と述べた。
しかし、最近は島内の世帯数があまり増えていないのに対して、配水量が増えている原因の一つに急激な観光客の増加によるリゾートホテルの建設ラッシュを挙げた。
前里教諭は「観光客1人の1日当たりの水使用量は宮古の一般家庭の倍以上。プライベートプールでは多くの水を必要とする。今後想定される事態は2カ所(袖山、加治道)の浄水場の能力を超える可能性もあり、直ちに強化する必要がある」と訴えた。
そうした背景を踏まえて前里教諭は▽地下水を大量にくみ出すことの危険性▽宮古においては新規水源開発によるミスが許されない▽くみ上げ過ぎによる地盤(土壌)の自然沈下-を挙げて注意を喚起した。
安全で安心な飲料水の管理について前里教諭は、地下水を「公水」と位置づけて官民学による独立した地下水管理組織を立ち上げて「協働」管理を行うことも提案した。
そのほか、シンポジウムでは前里教諭、琉球大学理学部の新城竜一教授、辺野古への新基地建設の問題点を土木工事の観点から指摘している土木技術者の奥間政則氏、旧宮古島上水道企業団企業長・上地慶彦氏がそれぞれの立場から宮古における地下水保全の重要性について訴えた。
決議文では、大型ホテル建設や千代田への自衛隊基地建設が強行に行われていることなどを指摘し▽全島的な地下水源水脈と精密な断層の調査を実施し、市民に情報公開する▽市の上水道給配水計画や新たな水源開発計画の詳細公表▽地下水審を開催し、開発による汚染の恐れについて審議し、その内容を客観的データに基づいて公表する-3項目を採択した。