泥を塗られて厄払う/島尻で「パーントゥ」
住民、観光客の歓声響く
国指定重要無形民俗文化財の奇祭「平良島尻のパーントゥ」が8日、島尻集落で2日間の日程で始まった。つる草を全身に巻き付け、泥を塗った3体の「パーントゥ」が姿を現すと、集落内はざわつき始め、逃げ回る人たちの歓声が秋の夕空に響いた。
パーントゥに泥を塗りつけられると厄をはらうことができることから、泥を塗られた住民や観光客は大喜びで「面白かった」「すごい怖かったけど、楽しかった」などの感想が聞かれた。
パーントゥが集落のはずれにある「ウマリガー」から姿を現したのは午後5時すぎ。周辺で待ち構えていた人たちは「来たぞー」と声を上げ、ゆっくりと集落に近づいてくる3体を見守った。
集落に近づいて、住民や観光客の姿を見定めたパーントゥは突然走り出して住民らを追いかけ回し、つかまえた人に泥を塗りたくった。
集落に入ると、まずはムトゥであいさつ。地域の先輩たちに泥を塗りながら酒を酌み交わした。
ムトゥを出ると、パーントゥは大暴れ。集落内を走り回り、老若男女お構いなしに泥を塗りたくった。
小さな子どもたちは、パーントゥが近づいてくると「来ないでー」「怖いよ、怖い」と震えながら父親や母親にしがみつく姿が見られた。
家族全員では初めて訪れたという丹山実さんと明日香さん夫婦は、長女の由惟ちゃん(5)と大頌くん(4)と一緒に訪れ、パーントゥを満喫。大頌くんは「とっても怖かった。もう嫌だ。二度と見たくない」と怯えた様子で話した。
明日香さんは「最近、大頌があまり言うことを聞かないので、この経験を生かして『言うこと聞かないとパーントゥを呼ぶよ』といって、しつけたい」と笑顔で話した。
パーントゥは、数百年前に島尻の海岸に流れ着いた仮面を男性がかぶり、集落内を走り回ったことが始まりとされている。当時の村人たちは、流れ着いた仮面が海のかなたから訪れた来訪神として崇拝した。