肉用牛妊娠鑑定率伸びる/母牛全体の7~8割実施
肉用牛の生産性を高める妊娠鑑定の実施率が伸び続けている。県農業共済組合宮古家畜診療所が実施した2017年度の妊娠鑑定は2155頭で、前年度より225頭、5年前と比べると850頭以上増えた。民間実施を含む頭数は4000頭を超えるとみられ、宮古島市全体の母牛頭数に占める鑑定実施の割合は7~8割に達している。生産者の高齢化や飼養頭数の減少といった諸課題を抱える素牛産地に光明が差す。
妊娠鑑定は、生産性を高める上で欠かせない取り組みの一つ。妊娠の有無を早期に判断し、状況に応じて最適な手を打つことで分娩間隔が狭まり、子牛の生産効率を高められる。
宮古地区では生産者の高齢化に伴って母牛頭数は減少傾向にある。連動して競り市場への素牛(子牛)上場頭数も減っている。この悪い流れを止めなければ素牛を買い付ける購買者の市場離れを招き、最終的には買い叩かれて価格に響く。
こういった事態を引き起こさないためにも妊娠鑑定の実施が有効だ。家畜診療所を含む関係団体は「1年1産」の実現に向けて妊娠鑑定の実施を強く推奨してきたが、その成果が着実に表れてきたと言える。
ここ数年、家畜診療所が実施した頭数は▽12年度1297頭▽13年度1430頭▽14年度1718頭▽15年度1883頭▽16年度1930頭-と右肩上がりで推移しており、今年度はさらに増える傾向にある。
同所の金城肇所長は「現状の母牛頭数の中で分娩間隔を短くし、生産の回転率を上げるという理解が確実に広がっている」と意識の向上を挙げ、「これも関係機関が一丸となって取り組んできた成果だ」と話す。
ただ、一方では「子牛の死亡事故を減らさなければならない」と指摘する。宮古地区の分娩事故発生件数は県内最悪で、今年度上半期の事故件数も130頭と前年度を上回るペースだ。
金城所長は「事故を減らすことで競り上場頭数も維持できる」と即効性のある対応を促し、分娩時は牛を放したり、分娩用のスペースを確保したりするよう生産者に呼び掛けている。