第2回宮古島文学賞 地元の森田さんが一席/宮古島市文化協会主催
椎名委員長が発表/佳作は東京の佐鳥さん
第2回宮古島文学賞(主催・宮古島市文化協会)の入賞作品発表が8日、市役所平良庁舎で行われ、最終選考委員長を務める作家の椎名誠さんが一席と佳作を発表した。一席には市内で歯科医を営む宮古島出身の森田たもつさん(59)の「みなさん先生」が輝いた。佳作は東京在住の佐鳥理(さとり・さとり)さん(40)の「紺碧のサンクチュアリ」が受賞。二席は該当なしとなった。
「島」をテーマに短編小説を募集する宮古島文学賞。今回は60作品の応募があり、1次、2次選考を経て最終候補作として8作品を選定。椎名さん、日本児童文学者協会会員で宮古島市在住のもりおみずきさん、詩人、作家で大宜味村出身の大城貞俊さんの3人の最終選考委員による選考会を7日に市内ホテルで開催し、満場一致で森田さんの「みなさん先生」が一席に選出された。
「みなさん先生」は架空の島で宮古島の離島という設定の「那小島」という島が舞台。ブラジル移民の主人公が25年ぶりに宮古島へ戻り、終戦まで教師をしていた那小島を訪問。いとこの孫に当たる小学5年生の少年に、戦争終了後、疎開先の台湾からの引き上げ船が遭難し教え子を亡くしたことを語る。少年は戦争の話に驚き、悲しむが、その後、主人公の遺志を継いで教師になる-というストーリー。
椎名さんは選考を振り返り「前回より応募作品は少なかったがレベルは上がっている」と語った。一席受賞作については「自分の中では何となく受賞作品はこれ(「みなさん先生」)で決まりとの評価を持っていたが、ふたを開けてみると満票で評価された。それほどほかを圧して完成度の高い作品」と高く評価した。
もりおさんは、台湾からの引き揚げ船が遭難するという事故は実際にあった出来事で、今作はその話を基に独自の世界を書き上げていると評価。「主人公の悔いと同時に平和への思い、ふるさとへの思いがたくさん詰まっている。主人公の話を聞いて少年は島でも戦争があったことを初めて知る。こういうことがあったと伝えていける作品だと思いとても感動した」との思いを述べた。
大城さんは「戦争を中央からではなく島に住む人の視点から戦争も含めて世界を捉えている。これこそが宮古島の文学賞が持つ目的の一つだと思う」との考えを示した。
二席が該当なしとなった理由について椎名さんは「一席の作品があまりにも完成度が高く、それに次ぐものはないということで該当なしとした」と説明した。
同文学賞の授賞式・祝賀会は3月3日に市内ホテルで開催される。