分娩事故 増加の一途/肉用牛
農家の高齢化要因か/市、防止へ新事業導入
宮古島市内における肉用牛の分娩(ぶんべん)事故が増加の一途をたどっている。県農業共済組合宮古家畜診療所のまとめで、2018年度の新生子異常による死亡は207頭。前年度と比べて60頭増えた。肺炎では47頭、下痢などの消化器系では103頭が死亡した。全体死亡頭数は競り1カ月分の上場頭数に匹敵しており、経済的損失は大きい。宮古島市は19年度、分娩監視システム導入補助費を予算化。事故を未然に防ぐ手立てを講じる。
新生子の異常をはじめ肺炎を指す呼吸器系、下痢などの消化器系とも前年度の発生件数を上回った。要因は分娩時における管理不行き届きとみられ、背景には農家の高齢化がある。
分娩時は原則として牛を放したり、分娩用のスペースを確保したりするのが基本だ。分娩に立ち会って事故が起きないよう見守る必要もあり、素牛(子牛)生産飼養管理の上では最も注意を払う場面とされる。
ただ、宮古島市ではこういった管理が徹底されていない。生産農家の高齢化に伴って労働力は大きく減退しており、臨機応変の対応が困難になっているという見方が強い。結果として牛を死なせてしまうケースが後を絶たないという。
さらに、飼養頭数が増加していることも一つの要因に挙げられる。畜産関係団体は、増頭によって畜舎が手狭となり、分娩場所を仕切るなど頭数に見合った畜舎環境が整えられていないことが死亡件数を押し上げているとみている。
年間の全体死亡頭数は357頭で、先月の競り上場頭数とほぼ同数となる。同月の子牛1頭平均価格からはじく経済的損失は2億7000万円。生産性及び農家所得の向上を図る上でも死亡牛を減らす取り組みが求められている。
こういった現状を改善しようと、市が分娩監視装置の導入費の一部を補助する新規事業を実施する。
母牛の窒内にセンサー付きの機材を挿入し、おおよその分娩時間を把握するモバイルシステムで、40万~50万円かかる基本セットの導入費の2分の1(上限20万円)以内を補助する。
システムを導入した農家は分娩時間前に情報を受け取れる。情報は畜主がどこにでも持ち歩く携帯端末で受信。通常、分娩時期は母牛から目が離せなくなるが、システムを導入すればこういった素牛生産にかかる負担が軽減される。
すでにシステムを導入した農家もいて、「牛を死なせることがなくなった」と評価する声は多い。
事業の申し込みは5月7日に開始する。同31日まで受け付ける。問い合わせは市農林水産部畜産課(電話76・2246)まで。