多良間「抱護」、「林政八書」が林業遺産に
県庁で認定証伝達式
【那覇支社】防風・防潮林などの役割を果たしている「多良間島の抱護」と琉球王国の三司官だった蔡温が定めた林業についての法令などをまとめた「林政八書」に対する「林業遺産」の認定証伝達式が14日、県庁で行われた。県農林水産部の長嶺豊部長から伊良皆光夫村長と林政八書研究会の仲間勇栄会長(琉球大名誉教授)に認定証が手渡された。林業遺産の認定は県内では初めてで、全国では34件目。
林業遺産は、日本森林学会が林業発展の歴史を将来にわたって記憶・記録するため、林業の歴史を示す景観や施設など地域に結び付いたものや、体系的な技術のほか特徴的な道具類、古文書の資料群を認定するもの。多良間島の「抱護」は、琉球王国時代に蔡温の政策により県内各地で植樹された中で、唯一、良好な状態で残っている。
伝達式にあたり長嶺部長は「林政八書に基づく多良間島の『抱護』は現在、県の天然記念物に指定して多良間村教育委員会を中心に保護を行っている。今回の認定を契機に、未来永劫(えいごう)に残されていくことを願っている」と述べて関係者を激励した。
認定証の交付を受けた伊良皆村長は「この認定を心から喜んでいる。『抱護』は島では『プーグ』と呼ぶが、単純に島の防風・防潮林としての役割を果たしたというものではなく、さまざまな生活資材に活用されるなど、島社会の生活に根ざしたものだった」と述べた上で、「先人たちが守り続けてきた『抱護』をこれからも大事に守り続けていきたい」と述べた。
今回の認定に際し中心的な役割を果たした林政八書研究会の仲間会長は、多良間島だけが「林政八書」に基づく抱護を残している地域であることなどを説明したほか、「抱護は、農業や生物生態系全体に好影響を与えるものだということが明らかになっている」と述べ、琉球王国時代の技術を高く評価した。
その上で、「今後の県行政にも何とか、この技術を反映させてもらいたい。エコロジカルな森林帯の形成こそが島社会そのものを発展させるものだ」と述べて、行政の取り組み策に期待を寄せていることなどを力説した。