国の責任認定に安堵/ハンセン病家族訴訟
勝訴に宮古関係原告ら/「家族被害知るきっかけに」
国の長年にわたるハンセン病強制隔離政策で、患者の家族も偏見・差別を受けたとして、宮古関係の約60人を含む元患者の家族が国に謝罪と損害賠償を求めた訴訟の判決が28日、熊本地裁であり、国に計3億7600万円の支払いが命じられた。原告らは「家族の被害が認められた」と国への賠償責任の認定に安堵(あんど)。一方で「闘いはこれから」とも話し、判決を契機とする家族被害の発信と、偏見・差別のない社会の実現に向けて決意を新たにした。
原告及び弁護団はこの裁判で、偏見・差別は病歴者のみならず、家族にも「潜在的感染者」「忌避・排除されて当然の人」という偏見が社会的に植え付けられたと訴え。これにより、苛烈ないじめのほか進学、結婚時においても差別に苦しんできたと主張していた。
国に賠償を命じた判決に関し、弁護団の八尋光秀共同代表は「家族に対する差別偏見の除去に国を挙げて対応すべきだったことを認めた画期的な判決」と強調した。一方で、敗訴した20人については「控訴を前提に話し合う」と述べた。
宮古南静園退所者で沖縄ハンセン病回復者の会共同代表の知念正勝さんは、国の責任を認めたことに関しては「画期的」と評価しながらも、「『全面勝訴』がほしかった。今回の判決の内容をしっかりと見る必要があると思う」と話した。
宮古関係者で原告の一人は「勝利判決は当然の結果であり、被害が認められたことはうれしい。ただ、棄却された人もいたので決して手放しでは喜べない」と受け止める。この結果を踏まえ、「判決がハンセン病や家族の被害を知るきっかけになってほしい。明日から新たなスタート。差別、偏見との闘いはこれから」と引き締めていた。
2001年の国賠訴訟を含めて、ハンセン病元患者や家族の支援に当たってきたハンセン病と人権ネットワーク共同代表で県議の亀濱玲子さんは「原告が勇気を持って闘ったことに意味がある裁判で、家族にも被害が及んだんだということを認めさせた」と話し、多くの苦難を乗り越えてきた原告に思いを寄せた。その上で「隔離政策が家族をも追い詰めていったということを改めて社会に問う裁判になった。私たちが、みんなで考えていかなければならない」と力を込めた。