政府の控訴断念に安堵
宮古関係者60人 「声届いた」
ハンセン病元患者の訴えを認めて国に賠償を命じた熊本地裁判決で、政府は9日までに、控訴しない方針を決めた。宮古関係者約60人を含む原告らは一様に安堵(あんど)し、判決の確定を喜んだ。ただ、今も残る偏見と差別の解消に向けて気を引き締めている。
宮古関係の原告の一人は昼ごろに控訴断念の報を受けた。「判決のときは確定ではないので次につなげられなかったが、今はやっと私たちの声が国に届いたんだという気持ちでいっぱいです」とかみしめた。
その一方で「判決が確定したからといって、あしたから大手を振って歩けるかといえばそう簡単にはいきません。でも、5年後、10年後に家族もそうやって歩ける社会になっていくことを信じている」と話した。
今後については「課題は残されたままで、棄却された原告の方々の新たな闘いの始まりでもある。今回の裁判で国に訴えていく柱ができた。提訴できなかった人も含めて新しい闘いに向けての区切りになった」と話す言葉に力を込めた。
宮古南静園退所者で沖縄ハンセン病回復者の会共同代表の知念正勝さんは「喜んでいる。これはこれで受け入れ、残された課題や問題に取り組んでいく」と話した。地裁判決で原告人の請求が棄却されていることを踏まえ、「弁護団、原告とも納得できない部分はある。本当に人は被害のひとかけらもなかったのかどうか。みんなで(国の責任を)認めさせるような運動を展開していかなければならない」と話した。
元患者や家族の支援に当たっているハンセン病と人権ネットワーク共同代表で県議の亀濱玲子さんは「差別と偏見の解消という大きな課題が社会に問われた裁判だった」と話し、判決と控訴断念の意義を強調。「私たちはこれからも家族の皆さんと共に取り組んでいきたい」と決意した。