官民連携で高齢者福祉/新春座談会
情報交換会を開始
宮古島市の高齢化率は22・5%(65歳以上・2010年3月現在)。21%を超えると超高齢社会と呼ばれる。宮古島では行政、民生委員、社会福祉協議会、老人クラブなどがいろいろな活動をしながら超高齢社会の福祉を支えている。これからの宮古島の介護予防などについてそれぞれの立場から語ってもらった。
上里寛昌 社協、行政にいつもお世話になっている老人クラブです。きょうはこれからの超高齢社会にどのように向き合っていくか、より安心して住める宮古島にしたいというのが狙いなのでこの座談会で十分な意見交換をして、今後の高齢者福祉を進めてほしい。
島尻郁子 宮古の高齢者が強い不安感を持っていることを相談業務を通して感じた。一人でいても二人でいても不安感を募らせて生きている人がとても多い。
老人クラブや生き生き教室に参加する人たちは、元気で楽しそうに見えるが、家庭に入るとそうではない現実が見えてくる。
高齢者が長生きしてよかったと思えるような地域になっているかどうかを本音の部分で検証したいと思う。
花城愛子 西原地区を担当しているが、老人クラブの会員でもある集落の人たちは、友愛訪問を一番重点に置いて活動している。
平良礼子 私たちは介護予防と総合相談を担っているので、ブランチからの情報は大事だと思っている。毎月報告してもらっている。一人暮らしとか要援護者の区分も記載してもらっている。
大浦ヒデ 目配り気配り心配りの活動を、一人一人の独居老人の見守りネットワークを作ろうとスタートしたが、住所が分からないという壁にぶつかっている。どこでもらえるのか。
松長寧 個人情報(保護法)などいろいろな問題はあるが、包括支援センターの情報を相談員、民生委員も共有する。また相談員、民生委員が持っている情報を共有することが必要ではないか。
今年1年間はテストケースでも良いので、一体感がある体制が作れれば、強いネットワークができると思う。
司会 行政と現場間の有機的な連携が薄いのが問題として浮上した。これを解決することが超高齢社会の介護予防、福祉につながると思うが。
大浦 10人内外の小単位の高齢者がお互いに助け合う心を自ら育てていく。自分たちで話し合いながら問題を解決していくことも大切ではないかと思う。
松長 09年から始めた友愛みまもり活動の中で、上野、下地で虐待を受けているみたいなので何とかしてほしいとの相談が3件あった。老人クラブは当事者と行政の橋渡しをした。百パーセント解決できたかというと難しいようだった。
松川英世 市が宮古島市高齢者福祉計画並びに第4期介護保険事業計画を09年に3年スパンで出した。
その中に高齢者虐待という項目もあり、虐待についてはネットワークの強化を図り、虐待の未然防止に努める。市そして地域包括支援センター、社会福祉協議会が連携し権利擁護を推進するとある。
社協の権利擁護事業の現状は厚生労働省の基準から1人で35件と決まっている。これはオーバーしている。
人の命が懸かっているので、今の予算の中で考えてほしい。
大浦 見守ってあげたいという健康な高齢者もいっぱいいる。健康な高齢者の人が本当に困っている人に目を向けることも大切なこと。ほかの人に話せないことが年代が同じなら話せる。
池村薫 認知症だけれどどこの病院に行っていいか分からないなどの相談があるので、行政だけではなく地域の人との連携が必要だと思っている。
司会 大浦さんが旧平良市内は個人情報保護法に阻まれてきめの細かい対応ができない。この辺の情報の共有について行政側の考えはどうか。
亀濱洋一 各地域から敬老会をしたいので名簿がほしいとの依頼があったが、役所は規定があって出せない。
垣花直 4情報つまり住所、氏名、年齢、性別について個人的には別に(いいのではないか)という気持ちはあるが、法の枠に入っているので…。
司会 情報を吸い上げるという意味で地道な活動が必要になってくる。それが情報不足で壁にぶつかっている。介護や福祉の問題で(官民が)もっと近寄れないか、つまり血の通った活動ができるようにはならないか。
花城 民生委員の定例会でもその話が出た。一人暮らしの人を訪問したいがどこにいるか分からない。
個人情報保護が立ちはだかる。守秘義務をちゃんと守るのになんで教えてくれないかという話は出た。市街地の民生委員はすごく困っている。
池村 花城さんや大浦さんが必要としているデータを基に私たちは訪問をしている。民生委員には無い情報が私たちにはあるので連携が取れれば一番良いのではないか。そうすれば少しは血の通った活動になるのではないかと思う。
垣花 個人情報保護法があるから絶対だめということではなくて、情報提供を審査する会がある。そこで出すということは可能。臨機応変に、少なくとも4情報(氏名、住所、年齢、性別)の提供は改善された方が良いと個人的には思っている。
池村 地域からの声を上げるには地域の人と連携しないとできない。地域性もあり、他の人には話せないが、地域の人なら話せる、また逆のケースもあると思う。それぞれの問題を適切な人につなげられるようなネットワークを市が構築できれば良いと思う。
松長 目標としてはすべての自治会にサロンを立ち上げて集まって相談できる場所を提供する。居場所づくり。
松川 良い例が下地。これは国、県の事業で地域福祉等特別支援事業で、本来下地だけではなく、宮古島全体でやらなくてはいけない。この事業で下地を八つの地域に分けている。それぞれに民生委員、自治会長、班長など地域の人20人ぐらいの規模で小地域ネット会議を2カ月に1度ぐらい開いている。
そういう地道な地域の活動が大きな仕事の礎石になっていくので、それを行政を含めてできるかが課題。
司会 計画ができあがって委嘱状が交付されて、その後が見えない。どうやったら血の通ったものになるか。
松川 大浦さんが指摘したように問題は市街地。まとまりがない。西辺、大浦などは地域性があってまとまっている。
亀濱 市街地の方が高齢者が多い。
大浦 でも市街地には集まる場所がない。
垣花 大切な指摘で同じ年代の人が集まって、会話するだけでずいぶん違う。
渡辺さつき 友愛活動の本部として大浦さんと花城さんと3人で活動している。虐待防止とか引きこもりなどを防止をするのには連携が大切。連携を強くするためには民生委員、老人クラブの会員、社協や行政が一つになって、月に1度とか2カ月1回とか定期的に会合を持って現状などの情報交換すれば、徐々に連携が強くなるのではないか。そこからまずは始めた方が良いと思う。
司会 皆さんそれぞれのところで頑張っている。でも、これが活動としてつながっていない。情報の隔たりがあったり、温度差がある。これを解決するためにはどのようにしたら良いのか。
松長 理想としては宮古のすべての自治会に下地が実施している小地域ネットワークを立ち上げる。それの前段としてサロンが理想的。それを立ち上げて浸透させる方法がいい。これが両立できれば宮古島は素晴らしい島になると期待している。
亀濱 老人クラブの単位クラブとかサロンの両方を上手に活用しながら、活動したらもっと情報が上がってくると思う。
大浦 すべての単位クラブの中にサロンができたら抜群だと思う。
池村 いろいろな地域にサロンとかデイサービスとかの機関が入っていて、組織自体はあるとは思う。そこにいる人、地域の人がその役割や目的を共有することも大切。
司会 組織などを作った後には誰かが汗をかかないと進まない。それもネックの一つになる。1カ月または2カ月に1回情報交換をするような会合ができないか。
垣花 これが実を結ぶためには、関係機関が連携を密に情報を共有することが大事だから、このような集まりは定期的に必要になってくる。
亀濱 いろいろ協力体制が作れるのではないかと思う。必要だなと思う。
垣花 友愛見守り事業を将来もっと発展させることも大切だ。
島尻 高齢者が幸せになれるところはみんな幸せになれると私は思う。
友愛見守り事業をしている老人クラブに初会合招集の音頭を取ってもらいたい。
司会 最初の集まりは松長さんのところで音頭が取れるか。
松長 老人クラブが先頭を切りましょう。きょう話し合った議題の実現に向けてどうするかに絞って話し合う。
松川 宮古はある意味で日本のモデルになると思う。人口5万5000人規模で地域性がある。
垣花 特に結の島。ユイマール精神を活用して日本だけではなく、世界に発信できればと思う。
松川 この会合を通してネットワークができたので、宮古に来て学べ、宮古を見てごらんとそこまで言えるような島になりたいね。元気な島に。
▽出席者(敬称略・五十音順)
▽池村薫(市社協平良支所相談員)
▽上里寛昌(市老人クラブ連合会会長)
▽大浦ヒデ(市老ク平良支部副支部長)
▽垣花直(市介護長寿課長)
▽亀濱洋一(市在宅福祉係補佐)
▽島尻郁子(地域福祉コーディネーター)
▽平良礼子(市包括支援センター係長)
▽花城愛子(民生委員)
▽松川英世(社協事務局長)
▽松長寧(市老ク事務局長)
▽渡辺さつき(老人ク活動推進員)
▽金子進(司会・宮古毎日新聞)