公共事業押し上げ活性へ/仲井真弘多知事新春インタビュー
先島振興策、同時に推進
【那覇支社】沖縄県知事は総業務量の約8割が在沖米軍基地問題への対応だといわれている。過去の例にもれず、仲井真弘多知事も数ある県政運営のほとんどを米軍基地問題に割いていることには間違いない。昨年11月の第11回県知事選で2期目再選を果たした仲井真氏は、自らの公約に米軍普天間飛行場の「県外移設」を盛り込んだ。これまでの「県内やむなし」とする発言を180度転換する公約に選挙民は驚いたが、それは「選挙方便」ではなく、仲井真氏の「行政長」としての役割を自覚した持論があった。知事選で繰り返した「離島の振興なくして沖縄の発展なし」。その言葉通り、行政長の力点を「離島振興」に据える考えだ。沖振計締めくくりの今年、仲井真氏は選挙公約を果たせるのか。宮古の夢は、仲井真氏の双肩にかかっている。本紙知事新春インタビューは先島振興に特化してその政策を聞いた。
-選挙公約で宮古、八重山の先島振興を訴えていたが、まず何から優先的に着手するか。その財政的根拠も示してほしい
先島でもあらゆる行政サービスはあるが、その内容レベルを充実させ、せめて沖縄本島並みにしていこうという考え。無論、先島にも沖縄本島よりも良いものはあるが、医療サービス、教育、福祉、特に子育て、それから、電気、ガス、水道、ごみ処理など、当たり前の生活の仕組みが沖縄本島の水準を下回ってはならないということで、ユニバーサルサービスを展開する。優先順位はなく、すべて同時に行う。どこが重点で、どこを優先するということはない。
教育でも、アメリカ有名大学の卒業証書をもらうことは簡単なこと。まじめに勉強さえすれば。国内でも各大学がいろいろな履修の仕組みを作っており、どんな地域にいても通信教育、放送などで大卒資格が取れるシステムができている。先島でも可能なので、きちんと構想を練ってもらって、できるものから、どんどんやってもらえれば良い。
医療については、中部病院と診療所のやり取りは既に始まっている。専門の先生が付いて指導を行うなど、もっと内容を充実させる方策はいろいろ考えられる。
水道も各市町村で別々にやっているものを一緒にするなど同時に事業を進めていく。同時に(事業を)やった場合、お金がかかる部分はどうするのかという課題があるが、沖縄への一括交付金と同じ考え方で、先島振興予算の「一括計上」の方法を考えている。公共事業は少し落ち込み過ぎた。それを押し上げる必要もある。そういう意味でも国の新年度予算をどうやって、取っていく仕組みにするのかがカギになる。
沖縄本島では鉄軌道導入をさまざまな人たちが研究しているが、同計画などの大型公共事業が行えた場合、170億円規模の投資効果が出る。経済成長率は約1%増になる。大きな公共事業が始まると景気対策にもなる。そういう道筋を4年の間に作りたい。
-宮古、八重山では県立病院に診療科があっても、専門医などの人材不足で診療できないというケースが発生する。こうした医療人材の確保は県の課題だが、今後、どのような対策を講じるべきと考えるか
この点については、専門の福祉保健部長たちの意見も聞いてもらいたい。彼らもいろんな努力をしながら、やっているが、既存の人材バンクや、さまざまなルートを通じてやるしかない。医療の問題を含め、人材については専門家を必要とするときに、それをどうやって確保するかということは難しい課題だ。
医療人材は、医学部定員枠を増やして将来の人材を確保するのか、当面の人材をどうするのかという問題があるのは分かるが、この場で即答することは難しい。医師の確保、看護師の確保を含め、それから福祉関係でも、島々のハンディキャップが大きいのはよく分かる。
ただ、今、(人材が)ゼロというわけではない。それにどれくらい足していけるかということで、当面、10程度の分野があるので、現状とユニバーサルサービスレベルの差をどうやって埋めていくのか、お金はいくらかかるのか、どれくらいの時間が要るのかを含めて整理整頓していく。もう少し待って頂きたい。今、申し上げると不正確な数を申し上げる結果になりかねない。
ただ、すべての分野でのユニバーサルサービス実現を目指して、やりたいと思っている。チェックシートみたいなものも要る。航空運賃での離島ハンディキャップもある。その料金を低減化するために、ある条件付きで下げていくことなども含めて研究しているところ。
また、物流コスト、旅客代、船や飛行機の両方での手助けをわれわれがしないと、離島のハンディが大き過ぎる。すべての県部局において、離島の問題は同時に存在するので、全体を洗い出して取り組んでみようと思っている。
-先島の自衛隊配備に対する考えは
自衛隊配備は県議会でも何度か答弁したが、自衛隊をどこに、どう配備するかというのは、すぐれて国の防衛政策そのものだと思っている。担当省がきちんと考えて、きちんと配備することに対しては、当然、受け入れるべきことだと思っている。
ただし、沖縄の戦中、戦後の歴史を考えると、沖縄戦当時の日本軍に対する、いろいろな思いがあったので、そういうことを思うと、「軍隊は県民を守らない」などの(住民の)さまざまな考えや体験がある。そういうことを踏まえると、島々の、そして人々の理解と協力を最大限得るような努力が必要だ。
-尖閣諸島への視察時期と方法を
(知事1期目の)4年間でできなかったことの一つだが、早めに行いたいと思っている。行くことは難しくない。たまたま、過去2回、行こうと考えたが、別用で行けなかった。いつでも行ける話なので、過去4年間の反省を踏まえて、早めに実現したいと考えている。