「人間の知覚は不完全」
交通事故を心理学から探る/一川千葉大教授が講演
交通事故防止を心理学の観点から探ろうとする講演会が28日、市未来創造センターであった。「自動車事故とヒューマンエラー」と題し、千葉大学の一川誠教授が人間の知覚や認知の仕組みを紹介しながら、交通事故の原因となる見落としや見誤り、錯覚との関係性を説明した。一川氏は「生物の知覚、認知は完全ではない。特に高速移動(自動車運転)は人工環境であり、自然環境に合わせて進化してきた視覚には速すぎるため、高速移動時は時間的見積もりを誤ることが多い。運転に自信があっても余裕を持って行動することを心掛けるべき」と話した。
講演会は宮古自動車学校が主催し、市民や関係者らが集まった。一川氏は遠近法を使った絵画や錯覚を引き起こす映像などを用いて、人間の知覚、認知の仕組みを説明した。一川氏は「それぞれの生物は進化する中で獲得した精度で、自分や周囲の状態についての情報を得て行動している。自分の知覚のセンサーの対象となっている特徴しか知ることはできない」などと話し、人間の知覚、認知が完全でないことを前提に自動車運転時の心理面の状態を解説した。
知覚は特に動いている状況では位置やタイミング、速度などさまざまな見間違いが生じ、また視野の中に動くものがあると、その他のものは見落とされやすい。自動車運転時は「自分の能力の過信」や「他者の状態への楽観的見通し」が心理的に働き、必要時間を過小評価したり右折時の対向車までの距離を過大視するため、事故の要因となると説明した。
質疑応答で知覚、認知の男女差について問われた一川氏は「男女差はない。その人の得意、不得意の違いはある」と答えた。