泥を塗って厄払い/国指定文化財「パーントゥ」
ユネスコ登録後で初/平良島尻地区
国指定重要無形民俗文化財の仮面祭祀(さいし)「パーントゥ」が4日、平良の島尻地区で始まった。きょう5日まで。ユネスコ無形文化遺産に登録後では初めて行われた。体中に泥を塗り仮面をかぶったパーントゥ3体が、集落内を駆け回り、住民や観光客らに泥を塗って厄除けした。集落内は泥を塗られた人の悲鳴と笑い声が響いていた。
パーントゥが集落のはずれの「ウマリガー」から姿を現したのは午後4時半すぎ。その後は集落内に入り、ムトゥであいさつをした。地域の先輩たちに泥を塗りながら酒を酌み交わした。
その後、パーントゥは集落中央の道路に集まった市民や観光客を追いかけ回し、捕まえた人に容赦なく泥を塗った。
子供たちは悲鳴を上げながら泥を塗られた。母親に助けを求めたり、必死に逃げ回る姿も見られた。中には抱きかかえられる子供もいて「助けてー」と泣き叫んでいた。
パーントゥは建物や自動車などにも泥を塗った。集落内は人も物も泥で真っ黒になっていった。
ユネスコ無形文化遺産に登録されたのは2018年11月。野原の「サティパロウ」とともに8県10行事をまとめた「来訪神 仮面・仮装の神々」として登録された。
島尻地区のパーントゥは、数百年前に、島尻でクバマと呼ばれる海岸に黒と赤の仮面が漂着。村人は、この仮面を海のかなたから訪れた来訪神と崇敬した。男が仮面をかぶって集落内を駆け回ったのが由来と伝えられている。
根間拓也さん、幸恵さん夫婦は、息子の康徳くん(2)の厄払いで訪れた。泥を塗られた康徳くんは「怖くなかった」と平然とした様子。拓也さんは「泣くと思ったら全然平気で驚いた。強い子になりそう」と笑顔を見せた。幸恵さんは「自分が厄年なので厄払いができて良かった」と話した。