宮古島の未来を創造/日本島嶼学会
持続的発展向け識者提言/省エネなど課題の共有も
島しょの現状と課題を共有する2019年度日本島嶼(しょ)学会(中俣均会長)宮古島大会が26日、市未来創造センターで始まった。特別セッションでは「宮古島の今と未来」をテーマに各界の識者が提言。自然環境や経済、観光、伝統芸能、エネルギーなど各分野の可能性を考察した。会員や一般市民は、これらの提言を通して官民連携を中心とする従来の枠組みに加え、省エネ対策など住民生活まで落とし込んだミクロの視点の重要性を確認した。
学会の宮古島大会は27日までの2日間開かれる。全体のテーマは「宮古島から展望する島嶼の未来」。基調講演やシンポジウム、研究発表を通して島しょの未来を創造し、島々が持つ限りない可能性を考える。
宮古島の未来を考える特別セッションでは、はじめに市エコアイランド推進課の三上暁さんが「エコアイランド宮古島」の取り組みを報告した。課題として▽地下水の保全▽観光資源の保全▽エネルギー等の地産地消▽人口、経済循環―を挙げ、「環境だけでなく経済や社会も同時に向上させていきたい」と述べた。
名古屋大学の今中政輝さんは、需給のバランスを維持するため、電力の使う量を制御する「デマンドレスポンス」に注目した。電気温水器や蓄電池などエネルギーの貯蔵性を持つ機器を利用し、太陽光発電の出力変動の影響を緩和する宮古島での実証実験を紹介。こういった技術が全国から注目されることや、その後の事業展開などから「脱炭素化の基礎となるビジネスモデルになる」とした。
関連して、東京大学の八木田克英さんらによる宮古島のエネルギー消費行動と再生可能エネルギーの導入に関する報告があった。
市民の消費行動を調べた結果、本土と比べて浴槽に湯はりをする生活習慣があまりないため、電気給湯機の需要が低いほかウォーターサーバーや炊飯器を使う機会の多さなどのベース消費量が高いと指摘。その上でエネルギー消費に関する習慣の改善を促した。
法政大学沖縄文化研究所の堀本雅章さんは大神島の観光地化と住民意識の変化を取り上げた。島への観光客が増え続ける中、2014年には減少を望む声がゼロだったのに、4年後の18年には減少を求める回答があったことに触れ、「この4年間の客層に変化が生じたことなどによるもの」とする分析結果を示した。
この日は宮古郷土史研究会の下地和宏会長による講演もあり、島で脈々と受け継がれるクイチャーの意義を熱を込めて語った。