首相「辺野古」を明言/普天間移設
知事「大変遺憾、極めて厳しい」/現行埋立修正案に戻る
【那覇支局】23日再来県した鳩山由紀夫首相は同日午前、県庁で仲井真弘多知事と会談し、米軍普天間飛行場の移設先について、「代替地は具体的には名護市辺野古の付近にお願いしなければならないとの結論に至った」と述べ、県内移設を初めて明言。同キャンプ・シュワブ沿岸部を埋め立てる現行修正案に戻ることを表明し、5月末までに米国政府と合意文書を交わす方針を県に説明した。
仲井真知事は、「辺野古への移設については大変遺憾で、極めて厳しいと言わざるを得ない」と県内移設受け入れは困難との立場を重ねて強調した。普天間移設を県外、国外に求める「県民の思い」は新政権にも届かなかった。
鳩山首相の来県は今月4日に続き2度目。昨年の衆院選で、「最低でも県外」と発言するなど、普天間の県外、国外移設を求める県民世論は、もろ手を挙げて鳩山新政権の決断に期待を寄せた。結局、前政権下で日米合意した現行計画案に回帰する形の結論は、県民のみならず、国民から大きな反発と政治不信を招くのは必至だ。
約20分間の仲井真知事との会談で首相は、県内移設を結論付けたことに対し、「なぜ、県内なのかという皆さんのお怒りはもっともだ」と前置きした上で、「昨今の朝鮮半島の情勢からしても、東アジアの安全環境は、いまだ不確実性が残っている。海兵隊を含む在日米軍全体の抑止力を低下させてはならない」と説明した。
さらに、鳩山首相は、「でき得る限り県外だという言葉を守れなかったことと、結論に至るまで県民に混乱を招いたことを心からおわび申し上げたい」と陳謝した。
鳩山首相は「新たな日米合意で目指すものは沖縄の皆さま方の負担を減らすというのが政府の考え」とし、27日に開催が予定されている全国知事会で、県内で行われている米軍訓練の分散、移転について協力要請することを説明した。また、前回の知事との会談で、仲井真知事から要請のあった訓練区域の一部返還や制空権解除、航空機騒音の低減などを日米交渉で進めていくとの考えを示した。
仲井真知事は、首相を凝視し、説明をうなずきながら聞いたが、4・ 25県民大会や今月16日の普天間基地包囲行動の様子を伝え、「県外・国外という県民の熱い思いとの落差は非常に大きい」と批判した上で、「時間をかけて、説明と納得のいく解決策をきちんとしていただくほかはない」と求めた。
この日、県議会が普天間県内移設を断念するよう求める異例の「座り込み抗議行動」を行ったほか、県庁周辺では市民、労働団体が首相来県に抗議する集会を開き、警察が出動するなど騒然とする空気が漂っていた。