「聞こえ」取り戻そう/人工内耳の有用性強調
難聴外来設置向け講演会/宮古病院主催
東野氏(宮崎大医学部教授)講師
「聴覚は取り戻せる」-。宮古病院(本永英治院長)の難聴外来設置特別講演が16日、市内のホテルで行われ、難聴治療のスペシャリストとして活躍する宮崎大学医学部耳鼻咽喉・頭頚部(けいぶ)外科学教室の東野哲也教授が最先端の難聴治療について講話。現在では、人工中耳や人工内耳手術によって高度の難聴者が聴力を取り戻すことが可能になったことなどを報告。さらに、人工内耳は幅広い年代で安全に手術できることを訴え、その有用性を強調した。
同大学医学部では、耳の機能を取り戻す中耳炎手術(外耳道保存型鼓室形成術)や耳硬化症などに対する聴力改善手術で全国でもトップクラスの実績を誇っている。
宮古病院では、同大学の協力を得て、新年度から難聴外来の設置を予定していて、各種調整を図っている。
講話で、東野教授は補聴器と人工中耳、人工内耳について説明。「補聴器は、軽度から高度までほぼすべてをカバーするが、軽い難聴でも7割程度。高度だと3割程度しか聞き取れない」と課題を指摘。
さらに、耳栓で常に耳を圧迫するほか、皮膚炎が起こると耳だれになり、長時間は疲れることなどを説明した。
こうした問題を解決したのが人工中耳と人工内耳であるとした東野教授は「以前に比べて今では簡単な手術で聴力が取り戻せる。その対象は、言葉を1回覚えた後に聞こえなくなった人すべて」と話し、年齢とともに弱くなった聴力を取り戻すことができることを訴えた。
難聴について、東野教授はアメリカの調査結果を紹介。その程度が重いほど認知症になるリスクが高いことや社会的孤立を生じさせていることも報告した。
人工内耳については中途失聴だけでなく、言葉を覚える前の乳幼児についてもその有用性を強調。「できるだけ早い手術が好ましく1~2歳。最近では低年齢化し、欧米では生後6カ月でも可能になっている」と紹介。
実際に2歳まで耳が聞こえなかった女の子が人工内耳を装着して聴覚を得たことで言葉を話せるようになり、小学校入学時までにはほぼ問題なく会話ができていることも映像で紹介された。
一方で、言語習得の臨界年齢以降の人工内耳手術は効果が少ないとし、言葉を話すためにもできるだけ早い段階からの手術が有効であることを訴えた。
人工内耳については「その進歩はすごい。手術も簡単になり技術も向上した。耐久性もあり20~30年継続利用しても問題ない。音声だけでなく音楽の聴取もできる。もうすぐ、すべての装具を体内に埋め込めるようになって難聴者かどうかも分からなくなる時代が来る」と話し、聴力を取り戻すことが以前に比べて容易になっていることを強調した。
人工内耳 手術については、耳の後ろをほんの数センチ切開するか、耳の穴からだけの施術で済む場合がほとんど。日帰り手術も可能で、2~3日の短期入院、通院が難しい場合でも2~3週間の入院と、患者の状況に応じて対応しているという。
以前の耳鼻科では、もう治らないと宣告された人でも、最先端の医療技術により治療の可能性は広がっている。
電極を耳の中に埋め込み、マイクや電池は外付けだが、予想を超えたスピードで進化しており、さらなる技術の進歩で、どんどん小型化し、すべてが体内に埋め込まれる時代も近いうちに訪れるとしている。