入学祝い 自粛ムード/新型コロナ
感染リスク回避で/保護者は複雑な心境
新型コロナウイルス感染拡大の影響が、宮古島ならではの祝宴行事にも影を落とし始めている。7、8の両日に開かれる小学校の入学式。例年なら、親類ほか保護者の同級生や会社の同僚、友人らが集い、新入生を祝うのが風習だが、今年は祝宴の取りやめを選択する保護者が多い。保護者の心境は複雑のようだ。
新型コロナウイルスの感染が県内でも広がりを見せる中、集会や宴会など大人数が集まるイベントは中止か延期の措置を余儀なくされている。多くの人が出入りする宮古島も同様で、感染のリスクを少しでも下げようと自粛ムードは強まるばかりの状況にある。
そんな中、下地敏彦市長が3日、海外渡航歴や体調が万全ではない観光客らに来島の自粛を促した。市民に対しては酒席でのオトーリの自粛を求めている。
こういった社会状況を背景に、入学祝いを取りやめる保護者が増えている。入学祝いには多くの人が祝い金を手に駆け付けて不特定多数の人が行き交う。祝宴では一つのグラスを使って回し飲むオトーリも行われることから、間接的だが濃厚接触が繰り返される。
市内の41歳男性は、考えあぐねた結果、祝宴を取りやめることを決めた。注文していたオードブルや刺身は全部キャンセル。「宮古島で感染者が出たらやらないと決めていたがこうして県内でも広がっている。ぎりぎりまで悩んだけど、仕方がない」と苦しい胸の内を明かした。「いろいろな方が見えるので、どうなるかが分からない。責任が持てない」と話した。
この男性によると、同世代で新入生を持つほとんどの友人や知人が祝宴取りやめの判断をしたという。
3人兄弟の長男が入学するという30歳女性は「初めての入学祝いなので楽しみにしていたが、新型コロナウイルスの広がりが深刻な状況になっているので身内だけで行うことにした」と残念そうに話す。「友人たちに『お祝いするの?』と聞かれると『やらない』と答えているが、もしお祝い金を持ってきてくれる人がいたら家に上がってもらうかもしれない」と話した。
多くの保護者が祝宴を取りやめるようだが、本紙の取材では「大々的なお祝いは控えるが、一応やりたいと思っている」と話す保護者も。換気の徹底など感染予防策を講じながら、こぢんまり開きたいという。
祝宴について市教育委員会の宮國博教育長は「『やらないで』ということは言えない。ただ、今の社会状況を考え、冷静に、落ち着いて、節度を持っていただきたい」と言葉を慎重に選びながら話していた。
入学祝いの取りやめは地元経済にもダメージを与えている。ある業者では4日午後3時現在のオードブル注文は1件4台。「例年なら数十台の注文が入っている時期。本当に厳しい状況です」と肩を落とした。