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社会・全般
【インサイドリポート】宮古の医療現場、厳戒態勢/新型コロナウイルス(上)
感染者受け入れも想定内
世界中で新型コロナウイルスが猛威を振るっている。世界の感染者数は爆発的に増え、肺炎で犠牲になった人々の報告も後を絶たない。目に見えない敵との闘いはいつまで続くのか。宮古の医療現場は厳戒態勢を敷く。
■最大の脅威
10日、宮古病院。本永英治院長が強い言葉で危機感の共有を訴えた。
「今世紀おそらく最大の脅威が、この宮古島に伝播(でんぱ)する可能性が高まっている」
背景にあるのが宮古管内における疑い症例の増加だ。1週間前まで1日当たりの疑い症例はゼロか1人だったが、緊急事態宣言発令を境に3~5人に増えたという。
こういった疑い症例の患者が、一般病棟の内科外来の待合室に紛れ込むとどうなるか。仮に陽性だったら感染の拡大を招く。13日に開設した発熱特殊外来はそんな事態を避ける狙いがある。院内をゾーン分けし、可能な限り感染リスクを下げるという対策を講じた。
医療現場において感染者の受け入れは想定の範囲内だ。それほど現状は切羽詰まっている。
■医療崩壊の現実味
宮古病院に感染症対応病床は6床確保されている。だが、うち3床は結核用に位置付けられており、新型コロナウイルス用は3床しかない。
ひとたび島内で感染者が拡大して患者が押し寄せた場合、病院のキャパシティー(この場合は病床数)を優に超えて医療崩壊が現実味を帯びる。
病院独自で、キャパシティーを大きくする対策は打っている。病状が安定している入院患者に退院を促し、空いた病床をコロナ仕様に変える準備に入った。最悪の事態に備えてレッドゾーン(危険区域)を想定し、入院患者の移動等にも着手している。新型コロナウイルス軽症患者は別の病院で診てもらう調整も同時並行で進めている。
だが、いずれの対策にも限界はある。感染者が増え続ければ医療現場に混乱が生じ、重症者を受け入れる病床が足りないといったケースが起こり得ることから医療従事者は強い危機感を抱く。
医療用品の確保にも心配が及ぶ。宮古病院には医療用のガウンが3週間程度、米国の専門機関が認める微粒子用マスクのN95が2カ月分、一般のサージカルマスクは1カ月分あるという。
十分だろうか。中山幸子副院長は「厳しい状況にある。特にサージカルマスクは病院内でも使用制限をかけて工夫しているほど入手が難しい。どこまで今の状況が続くのか予想できないため、先を考えると厳しい」と胸の内を吐露した。
■PCR検査の限界
新型コロナウイルスに感染しているかどうかはPCR検査で調べる。宮古病院に充当できる医療機器はあるものの、検査薬が回ってこないため島内での実施時期は見通しが立たない。現状、疑い患者の検体を採取するまでが限界で、沖縄本島に検体を送って検査にかけるという手順を踏む。離島の場合、結果が出るまでに2~3日を要す。
ここが一つの落とし穴として懸念される。検体を採取された人はどこで結果を待つのか。自宅待機がセオリーだが、そこには家族がいる。仮に感染していたら家庭内クラスター(感染者集団)の発生源になりかねない。
部屋を別々にするという対策もあるが、重症化する恐れがある高齢者がいたり、妊婦がいたりする世帯の場合、もはや自宅待機は選択肢から除外するほかないだろう。
こういった疑い症例の患者を隔離するための検討が進められている。具体的には島内のトレーラーハウスを市が借り上げて使うという案だ。
調整に当たっている市生活環境部によると、トレーラーハウスを所有する事業所も前向きだという。垣花和彦部長は「財源や運用方法を詰めている段階だ」と話した。感染防止に向けて、官民連携の取り組みが進む。(山下誠)