市中感染に危機感/医療現場は「ぎりぎり」
院長「感染症対策の徹底を」/宮古病院
宮古島市で新型コロナウイルスの感染者が100人を超え、市中感染、医療崩壊が現実味を帯びる危険水域に入っている。県立宮古病院の本永英治院長は「市中感染の印象がある。今や誰が感染しているのか分からない」と指摘し、相次ぐ患者の受け入れに医療現場は「ぎりぎりの状態だ」と表現した。その上で、広く市民に感染症に対する行動変容を促し、全体で危機意識を持って市中感染を防ぐよう繰り返し訴えた。
宮古病院は2日、病院職員3人の感染が確認されたとして記者会見を開き、本永院長が陳謝した。併せて厳格な行動規制を敷いている病院職員の感染に「驚いている」と強調した。当該職員が島外に出ず、宴会参加等もなく、飲み歩いたこともないという調査結果を踏まえて、「どこで(ウイルスを)もらったのかが分からない」とした。
感染経路が追えない現状に加え、今の感染の広がりには危険な兆候が見て取れるといい、市中感染の可能性を指摘した。初期の患者は同じ店での感染が疑われたが、最近は「複数の店から患者が出ている」(本永院長)ことや、何らかの症状を自認しながらも出歩いて複数の店舗を回る「スーパースプレッター」の存在などを根拠に挙げた。
宮古病院が示した市中感染の定義は、症状のない新型コロナ陽性患者が市中に存在している状態のことを指す。スーパーでの買い物などでも感染する可能性があるという。
本永院長は「もう誰がかかってもおかしくない状況に近い」と述べ、市中感染で患者が爆発的に増える最悪の事態に懸念を強めた。
現状の医療体制については「ぎりぎりだ」とし、「新型コロナだけが患者ではない。私たちは、心筋梗塞やくも膜下出血、周産期や精神科の医療も同時に行わなければならない」と話す。「この状況でコロナ患者、特に重症者が出るとそちらに人を回すことを余儀なくされてバランスが崩れる。そうなると通常助かる命に影響が出てくる恐れがある」と危機感の共有を求め、「全体でそこまで考えていただければ決して軽率な行動は取れないはずだ」と訴えた。
市民への呼び掛けとして本永院長は「大勢での飲み会をやめる。飲み会をしても短時間で終わる。マスクの着用や会合では大声を出さないなど、感染症に対する行動を全体で実践する必要がある」と促した。「これができないとコロナ患者が増えて市中感染の状態になり、院内感染が起きやすい状況になりかねない。こうなると、医療の危機が迫ってくる」と話した。