児童虐待、宮古149件/県児相分室20年度
酒絡む「面前DV」多く
県中央児童相談所宮古分室は28日までに、管内における2020年度児童虐待の認知件数(速報値)をまとめた。全体の件数は149件で、前年度と比べてほぼ横ばいの状況だ。種別で最も多いのは心理的虐待で116件、このうち7割が両親が言い争ったり、暴力を振るったりする場面を子どもたちに見せる「面前DV」。そのほとんどが酒絡みの事案だという。身体的な虐待は20件、保護の怠慢や養育放棄と訳されるネグレクトは13件あった。
過去5年の認知件数を種別に見ると、身体的虐待や性的虐待に大きな変動は見られない。ただ、身体的虐待は3年連続で2桁に及ぶなど深刻な状況が続く。
ネグレクトも予断を許さない。ネグレクトは子どもを家に閉じ込めたり、食事を与えなかったりする行為のことを指す。子どもを不潔のままにすることや、病気にかかっても病院に連れて行かず放置することもこのカテゴリーに収まる。
19年度の認知件数は10件を下回ったが、20年度は再び2桁を数えるなど引き続き注視が必要だ。
心理的虐待は前年度同様に100件を超えた。中でも「面前DV」が多いのが特徴で、そのほとんどが酒が絡んでいる。夫婦げんか等で言い争う場面を見せてしまうことで子どもに心理的な負担を与えている。
児相宮古分室は、子どもたちに掛かる負担の増大を懸念し、「ほとんどが酒絡みで起こっている。決してお酒を飲むなということではない。トラブルを起こさない程度に、楽しく飲んでほしい」と注意喚起した。
宮古管内における児童虐待は、17年度に児童相談所の宮古分室が開設されてから認知件数が伸びた。同年度は全体で109件、18年度は200件を超えた。
県、市、警察など関係機関の連携に加え、児童虐待に対する市民の認知度が向上したことで、虐待に苦しむ子どもの声をすくい上げる基盤は整いつつある。だが、前年度も100件を超える報告が寄せられるなど課題は多い。さらにきめ細かな連携と、子どもたちを地域全体で見守る社会の形成が求められている。