検証・し尿処理施設整備事業見直し/市民負担2倍超に
座喜味市長「事業の妥当性検討」
座喜味一幸市長は市伊良部佐和田で進められている新しいし尿処理施設の整備計画見直しを検討している。国が所管省の異なる下水道と集落排水、し尿等の下水処理について「広域化・共同化」の計画策定を自治体に要請していることが背景にある。現在、2基稼働している平良荷川取の下水を処理する市浄化センターのオキシデーションディッチ槽(OD槽)の3基目の整備にめどが付きつつあることがきっかけだ。座喜味市長は伊良部まで運搬する業者の負担が増え、それが市民、市財政に跳ね返るのを避けたい考え。一方で事業費は今年度で3億1700万円がすでに計上されており、予算化後の見直しに今後の国との関係性を危惧する見方もある。
ダイビングP近くに放流
生活排水の下水道、農漁業集落排水、し尿の処理はそれぞれ所管省が異なる。下水道は国土交通省、集落排水は農林水産省、し尿は環境省。本来、し尿は下水道施設では処理できない仕組み。
宮古島市のし尿処理はクリーンセンターの建て替えの際に、公共下水道の処理施設に希釈して投入する方法に変わった。市には現在、し尿処理施設はない。一時的に下水道施設を借りて処理している状況。近年の人口、観光客の増加で処理能力を超える量が搬入される状況があり、新たなし尿処理施設の整備が課題となった。
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市は2020年3月、伊良部佐和田でし尿処理施設を整備する計画を決定。当時、市にとっての「命題」は早期整備だった。
平良荷川取の浄水センターの近隣も検討されたが土地が港湾関連用地で用途変更に期間を要するなどの理由で外された。また日最大処理量が70キロリットルと想定される中で、50キロリットル以上の開発は県の環境アセスメントの対象となるため49キロリットルの施設とした。環境アセスを実施すると事業期間が約3年間延びる。
新たな施設を整備しても処理量が足りず、現在の下水道施設での処理を併用するという判断をした。「命題」の前に、市民や業者の負担増については深く議論されず、曖昧にされた。
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現行の計画は今年度から3年間で整備し、24年4月の供用開始を目指すとしている。事業費は35億5600万円で、23億7000万円(3分の2)は防衛省の補助金。今年度は3億1700万円が計上されている。
市民負担の増加を懸念していた座喜味市長が計画の見直しに傾いたのはOD槽整備の兆しが見えたことがきっかけになった。下水道からの生活排水を浄化する施設で、市では供用開始時に2槽整備されたが、その後は加入世帯数が伸び悩み増設が進まなかった。増設できれば、隣接して高度の前処理施設を整備することで賄えるとの考えだ。
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前処理施設整備は約20億円が見込まれており、事業費が圧縮できる。供用開始は現行計画の24年4月も可能としている。
現在、1件当たりのくみ取り料金は1万6000円。伊良部に施設が整備されると、運搬距離や処理件数などから料金は2倍以上になると試算されている。距離が伸び燃料費がかさんだ上、時間もかかることから、1日の処理件数が減る。また伊良部大橋は勾配がきつく、し尿があふれる恐れがあるためバキューム車の積載量も減る。回収業者の経営が成り立たなくなり、負担は利用者(市民)に転嫁せざるを得ない。加えて稼働率が下がり、処理量が減ることから市の収入となる処理料金も減ることになる。
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現行の計画地は佐和田集落から距離があり、白鳥苑や霊園が近接し、周辺は雑木林。集落の一人は「住民は遠く離れているから臭いとかは関係ないと考えているんじゃないか。何よりも計画の事をよく知らない」と話す。
白鳥岬の沖合には観光客に人気のダイビングポイントが多数ある。夏場は多くのダイビング船が集まる。施設の処理水は海域に放流されるため、風評被害を懸念する声もある。
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動き出している整備計画を見直すことができるのか、市議会でも関心が集まっている。開会中の6月定例会でも緊急質問が出されるなど、野党は見直しを批判している。予算化された事業だが、市は4月になって、国に対し、変更を検討する旨、打診し了承を得たという。座喜味市長は「状況が変わった。(事業の)妥当性を検討する」と理解を求めている。