市街地増え、旧郡部は減/市の人口
全体では増も偏り顕著/20年国勢調査 地区別検証
このほど公表された5年に1度実施される国勢調査の2020年速報によると、減少傾向が続いていた宮古島市の人口は35年ぶりに増加に転じた。前回調査(15年)からの5年間は伊良部大橋の開通やそれに伴う観光需要の増大、さらに、みやこ下地島空港の開港、ホテルなどの建設ラッシュで宮古バブルといわれる現象に発展し、島の社会は大きな変化を遂げた。全体の人口は増えたが、その内容は増える市街地、減る旧郡部の構図で、偏りは調査ごとに顕著になっている。
■人口
同調査における宮古地区の人口が最も多かったのは1955年の7万2096人。その後は減少傾向となり、70年には6万人を下回って5万人台となった。
その後も一時若干の増加はあるものの減少傾向は続き、前回の15年の調査では5万1000人台となって、5万人を下回る可能性が出ていた。
しかし、今回の調査では前回調査の確定値と比べ1776人増の5万2962人となり、85年調査以降、減少が続いていた人口が7調査(35年)ぶりに増加に転じた。
■影響
宮古島市全体の人口が減少する一方で、平良地区の人口は逆に調査ごとに増加傾向で推移してきた。
最も全体人口が多かった55年調査時の平良地区は3万2716人だが、95年以降はその数を上回り続けており、今回調査では過去最高となる3万6000人台となった。
一方の旧郡部は、減少傾向に歯止めがかからない状況が続いていたが、今回の速報値では、増加に転じた地区が出るなど、これまでの傾向とは異なる状況も生まれている。
前回調査から今回調査までの5年間は、伊良部大橋開通や入域観光客の急増、宮古バブルの到来に加え、陸上自衛隊駐屯地の建設など島の社会に大きな変化が生まれた期間となった。
一気に増えたリゾートホテルは雇用を生み、島で生活する人たちを増やした。さらには、陸上自衛隊の駐屯地が配備されたことに伴い、多くの隊員やその家族が市民となり、島全体の人口にも影響を及ぼしている。
■増減
増え続ける平良地区だが、増えているのは市街地が中心で、池間島や狩俣などでは、人口減に伴う児童生徒の減少なども地域における課題となっている。
一方で、旧郡部ではほとんどの地域で人口減が進む中、陸上自衛隊駐屯地が配備された上野地区では今回864人増えて2010年の調査ぶりに3000人台となった。
伊良部大橋の開通で、島が急激な発展を遂げている伊良部地域だが、人口に関しては過去に橋が開通した池間島、来間島と同様の傾向として減少が続いている。
下地地域は減少傾向で推移するも、減少幅は他の地域に比べて小さく、今回は前回調査時から13人減にとどまっている。
最も深刻なのが、城辺地域だ。最も人口が多かった55年調査で1万6605人いた人口は減少し続けて、今回調査では5000人を下回り4912人となって、ピーク時の3割程度にまで落ち込んでいる。
■均衡
1月の市長選で当選した座喜味一幸市長は、公約の一つに「都市部一極集中の解消」を掲げている。
そのほかの公約は「農畜産業の振興」「離島医療の充実」「子育て支援、教育環境の充実」「福祉の充実」などだが、現状のまま人口が一極集中の状況だと、その行政サービスの提供にも偏りが生じかねない。
島全体の均衡ある発展に向けては、今回の調査結果で見えてきた人口の市街地一極集中型の解消に向けた施策も重要となっている。(垣花 尚)