前市長、収賄容疑否認/陸自用地めぐる贈収賄事件
初公判期日「政治資金」と無罪主張
【那覇支社】市上野の陸上自衛隊駐屯地の用地取得をめぐる贈収賄事件で、収賄側の前宮古島市長、下地敏彦被告(75)の初公判が1日、那覇地方裁判所で行われた。被告側は、千代田カントリークラブ(CC)前社長の下地藤康被告(65)=贈賄で有罪判決=から受け取った現金600万円は政治資金だとして無罪を主張した。
敏彦被告は罪状認否で、藤康被告から現金600万円を受け取ったのは事実だとしつつ、「政治資金としていただいた。決して賄賂として受け取ったものではない」と訴え、起訴内容を否認した。
一方で「政治資金収支報告書に記載されていなかったのは私の不徳のいたすところ」とも述べた。
検察側の冒頭陳述などによると、敏彦被告は、陸自配備の受け入れを表明することで、駐屯地が建設された千代田CCの土地売却を可能にし、謝礼と知りながら千代田CC前社長の藤康被告から2018年5月24日、東京都内で、「ありがとうございました」などと言われ、現金600万円を受け取ったという。
一方、弁護側は「千代田CCの土地は被告人の受け入れ表明に関わらず国に売却されていた。被告人も政治資金の提供を受けたとの認識でしかなかった」などと指摘し、「被告人は、自己の職務に関して賄賂を収受したことはなく、無罪であることは明らか」としている。
敏彦被告は、16年6月20日の市議会で、市長として、候補地だった牧場については反対の意向を示す一方、陸自配備そのものは受け入れを表明した。
防衛省は同22日に、千代田CCの土地を駐屯地用地として取得手続きを進めると前市長に伝達、了承を得ている。
小野裕信裁判長は、争点は公判前整理で▽職務性▽対価性▽賄賂性の認識-と整理されていると説明し、次回公判を5日午後に行うとした。12月17日の第6回公判で、結審とすることも明らかにした。
贈賄側の藤康被告は起訴内容を認めており、9月22日に懲役1年6月、執行猶予3年の判決が言い渡されている。