第27回トライ大会総括
東北に「ワイドー」のエール
24日に開催された第27回全日本トライアスロン宮古島大会(主催・宮古島市など)は、大会前から出場する選手、島民、大会スタッフら関係者すべての思いは一つ「被災地に勇気と希望を届ける」大会にすることだった。大会当日も宮古島の元気と「強人」たちのパワーを被災地に送ろうと、すべての関係者が心を一つにした大会運営を心掛けた。今大会はこれまで以上にいろいろな思いの涙が流れたが、人々が痛みを分かち合いながら思いやりの気持ちで互いに勇気づけあった印象に残る大会となった。
今大会には、海外16カ国・地域から75人、県外から1186人、宮古89人がエントリー。大会当日は1345人が自らの限界に挑戦した。
レースの結果、男子が河原勇人(33)=東京都=が3年ぶり2度目の優勝。女子は塩野絵美(31)=東京都=が5年ぶりに制した。
過去、男女とも日本人選手が大会を制したのは、第21回と第24回と今回の3回のみ。さらに、男女の上位3位をすべて日本人で独占した初めての大会となり、今回の大会は日本人に勇気と希望を与える結果となった。
25日に行われたワイドーパーティーでも参加した選手たちからは大会開催を評価する声が多く聞かれた。
佐々木啓三さん(64)=三重県=は「みんなの元気を被災地に送ろうという趣旨もよく分かるので開催されて良かった。震災があったからといって、イベントは中止すればよいというものではない。宮古島から元気を送ることできたと思う」と話した。
榊泰子さん(48)=埼玉県=は「震災があったとき仙台にいて被災し、3日間は出ることができずヒッチハイクで自宅まで戻った。震災直後はいろいろ思うところはあったが、結果的には開催して良かったと思っている。被災地から参加した選手もとても頑張っていたので、被災地にも元気が届くと思う」と述べた。
今大会で、総合4位に入った西内洋行さんの出身地は福島県南相馬市。地震と津波、さらに原発で壊滅的な被害を受け、両親らも現在、西内さんの住む兵庫県に避難している。
そんな西内さんはゴール後のインタビューで「きついときも腕につけた喪章と島の人たちの声援で最後まであきらめないで頑張れた」と話した。
今回のような震災で、人間は自然の脅威に打ちのめされ、無力さを痛感し絶望の淵に落とされることもあれば、トライアスロンでは素晴らしい自然の恩恵を受けながら自らの体力の限界に挑戦し、それを乗り越える感動も経験できる。
日本全体が苦しく大変な時期に開催された27回目の宮古島大会。最後まであきらめないで過酷なレースを完走したストロングマンたちの「あきらめないでがんばろう」のメッセージが大会参加者、関係者を通して被災した地域の人たちに広く届けられてほしい。