サトウキビ 機械化で労力低減/本土復帰39年
肉用牛、葉タバコも急成長
宮古の農林水産業は復帰とともに右肩上がりの成長を続けた。基幹作物のサトウキビをはじめ、農地の有効活用に伴う葉タバコ産業や施設園芸作物の成長も著しい。このような生産物を支えてきたのが1993年に散水を開始した地下ダム事業だ。巨額の予算を投じた基盤整備、かんがい施設設置事業の成果が顕著に表れている。
■サトウキビ
収穫体系は復帰前後に変化を遂げた。小型耕運機が導入され、馬で畑地を耕す時代は終わりを告げていた。
すべてのサトウキビをベルトコンベヤーに載せてトラックに積み込んでいた運搬作業もユニックが登場してからは昔懐かしい風景に変わった。機械化の推進で生産農家の労働力は大幅に軽減された。
復帰後は、大型のトラクターが導入されるなど一層の機械化が進んだ。93年には念願の地下ダムが散水を開始して「水無し農業」から脱却し、生産環境は大きく向上した。
ただ、地力の低下は大きな課題だ。沖縄製糖専務の砂川玄悠さんはこう指摘した。
「復帰前はそれぞれ馬のふん尿で農家自身が堆肥を作っていた。地力増強の重要性は今も昔も同じ。それが今後の増産につながる」
堆肥の重要性は、復帰39年を経た今もなお変わっていない。
なお、沖縄が本土に復帰した72年、宮古のサトウキビ生産量は5万㌧。沖縄全体が本土復帰に沸いた年、宮古の農家はまれに不作に見舞われていた。
■肉用牛
サトウキビ産業に次ぐ肉用牛(子牛)の生産も拡大した。
復帰直後の競り上場頭数は年間1000頭前後だったが、今では7000頭以上が出荷されている。
価格も右肩上がりを続けた。復帰直後の1頭平均価格は20万円台で推移しているが、96年以降は30万円台が相場になった。今では1000円台が当たり前のキロ単価も、復帰直後は600~700円台が主流だった。
肉用牛振興の要因は生産農家の飼育技術の向上と、官民一体の振興策に他ならない。
世界中の畜産業界を震撼させたBSE(牛海綿状脳症)をはじめ口蹄疫の侵入防止に全力を注ぎ、足腰の強い産地を形成したことも成長の要因に挙げられる。
■葉タバコ
復帰直後の葉タバコの栽培面積は165㌶だったが、年月とともに拡大して現在は600㌶以上ある。
面積の拡大に伴って生産量も増えた。復帰直後は305㌧だったが1995年以降は1000㌧以上を毎年生産している。
2009年度の実績を見ると、栽培農家は167戸、収穫面積は642㌶、収穫量は1537㌧で生産額は28億5109万円。生産額は復帰直後に比べて2倍以上の金額になるなど葉タバコ産業の成長を裏付けている。
サトウキビをベルトコンベヤーで運搬する光景は復帰後も見られた=旧上野村(豊島貞夫著、琉球新報社発行の『記憶の中の風景』より)