震災犠牲者に思い重ね/沖縄全戦没者追悼式
「負の遺産」に苦悩し祈る
【那覇支社】沖縄戦の犠牲者のみ霊を慰め、世界の恒久平和を願い、沖縄の心を発信する「2011年沖縄全戦没者追悼式」(県、県議会主催)が23日、糸満市摩文仁の平和祈念公園で行われた。追悼式には、退陣表明した菅直人首相が出席。昨年に引き続き2回目の式典参列となった。
日米安全保障協議委員会(2プラス2)で、米軍普天間飛行場の移設先を名護市辺野古崎とし、V字型1800㍍滑走路を建設することで合意した直後の「慰霊の日」。式典出席者らは、沖縄戦の「負の遺産」である在沖米軍基地が、今なお県民に過重な負担を強いることへの苦悩を抱きながら、東日本大震災の犠牲者に思いを重ねて平和への祈りをささげた。
会場の平和祈念公園には午前11時30分に平和祈願慰霊大行進団が到着。参列者全員が正午の時報とともに、黙とうし、20万余の犠牲者を慰め、恒久平和を誓った。
高嶺善伸県議会議長は式辞で「米軍基地から派生する事件事故の被害は、基地負担軽減を怠った人災。政府責任は重大だ」と述べ、悲劇が二度と繰り返すことのないよう強調した。
仲井真弘多知事は平和宣言で「平和な世界を求める沖縄の心に立ちながら、大震災に苦しむわが国のために、沖縄もまた貢献の任を果たしていく」とし、県民の英知を結集し、平和創造に取り組み、世界に発信することを宣言した。
嘉味田朝香さん(仲西中2年)が「平和の詩」を朗読。一枚の写真から次代に継承すべき沖縄戦の歴史と平和の誓いをうたい上げた。
菅首相は「終戦から66年、今なお沖縄には米軍基地が集中し負担軽減が遅れていることはざんきに堪えない。沖縄の負担軽減と危険性除去の取り組みに最大限に努力する」とあいさつした。
「平和の礎」では早朝から多くの遺族らが訪れ、礎に刻まれた犠牲者の名前をなぞり、ついえぬ思いの中で、「不戦の誓い」を新たにした。