「明和」以前にも大地震/津波・地震講演会
専門家が古文書基に研究報告
「最新科学が明かす明和の大津波と東日本大震災が残した教訓」と題した講演会(市教育委員会主催)が9日、千葉工業大学の後藤和久上席研究員(惑星探査研究センター・東北大学客員准教授)を講師に迎え市中央公民館で行われた。過去に宮古・八重山を襲った地震、津波に関する地質学的な研究報告を行うと共に、地震や津波に対し「正しく恐れ、正しく備える」ことが、東日本大震災のような被害を生じさせないためには必要。宮古、八重山は海岸部が観光地である特殊性も考慮した津波対策が喫緊の課題と指摘した。
講演会で後藤さんは「宮古島はこれまでの古文書や調査結果から『地震、津波の常襲地帯』で、1771年の明和の大津波以前にも大地震が発生している。明和の大津波が過去最大の津波だったとは限らない」と話した。
年間40万人を超えている宮古島の観光客は明和の大津波は知らない人がほとんど。その観光客を地震や津波が発生した際にどのように誘導し、安全に避難させるかは明和の大津波がどこまで遡上したかなどを啓蒙するための看板のようなものが有効になるとも提言した。
後藤さんは「発災した際に被害を最小限に食い止める『減災』は住民、自治体、研究者の取り組み次第で可能である」と述べた。
明和の大津波の遡上高を信頼できる古文書記録に基づいて数値計算を行うと下地島で12・3㍍だった。下地島の帯岩は明和の大津波では動いていない。八重山でも34・8㍍が最大で、これまでいわれている85㍍までは達しないことを明らかにした。
過去に宮古島を襲った津波を履歴を知る上で、津波が陸地に運んだ土砂の堆積、津波堆積物の地層的な年代や打ち上げられた津波石、特にサンゴ岩を調べるとで、津波がいつの時代にどこまで遡上したかが分かる。
宮古島には明和の大津波以前の1200年ごろ、1460~70年ごろ、1625年に津波が襲来したことを示す津波石が数多くある。
後藤さんは「東北地方太平洋沖地震は宮城、福島県の人たちにとっては869年7月に発生した貞観地震以来、千年に一度の規模といわれるが、岩手県では1896年に同様の遡上高を残した明治三陸津波が発生しており、岩手県の人にとっては百年に一度の津波。津波は必ず繰り返して起こるという認識が大切」と述べた。