島産イモの栽培普及へ/市農林水産部
「最古の伝来地」売りに/プロジェクトチームの設置準備
イモは、1605年に進貢船の乗員であった野國總管が中国から持ち帰って野國村(現・嘉手納町)で栽培し、琉球の各地に広めたとされている。これが薩摩にも伝わり、今の「サツマイモ」として日本各地に普及していった。
このようにして広がったイモの最初の伝来地が宮古島といわれる。
諸説はあるが、野國總管が琉球に持ち帰った年の11年前に当たる1594年、宮古島の砂川親雲上旨屋が沖縄本島からの帰途に嵐に遭って中国に漂着。3年後の97年に宮古にイモを持ち帰り、島内で栽培・普及させたという。
宮古島市教育委員会が編集・発行した「宮古島市の文化財」にも同様の史実が記載されており、これに従えば琉球最古のイモの伝来地は宮古島となる。
農林水産部はこの歴史に着目。戦前は主食として島民を支えたイモを見直し、現代の需要の波に乗って生産・販路の拡大を図る考えだ。
イモは干ばつや台風に強い作物で、季節を問わず年に2回収穫できる。県内の相場で生イモ1㌔当たりの買取代金は150円、10㌃当たりの収量(反収)は平均1・8㌧としており、販路が安定すれば反収で万円の収益を生む。
他の作物に比べて投資コストが低く抑えられる点も利点だ。
イモは定番の焼きイモのほか、ペースト状に加工して焼酎や菓子の原料として使用できる。葉を食するためのレシピもあり、県内はもとより全国で需要が拡大傾向にある。
栄養価も注目され、中でも紫イモはポリフェノールの一種・アントシアニンを含有。研究によって血液抗酸化機能の上昇、肝機能の改善、血圧上昇の抑制、便通促進など体調調節機能が確認されているという。
市農林水産部農政課のまとめによると、宮古地区の生産農家は92戸。生産面積は1374㌃、総生産量は247・5㌧だが、このうち出荷、販売している農家は戸で全体の2割にも満たないのが現状だ。
今後は、「琉球最古の伝来地」という優位性を生かして生産面積、生産量、販売実績の年次計画を立てる方針。市農政課の赤嶺淳幸係長は「宮古島産イモの生産拡大を図り販売先、ルートを確保し農家所得の向上に努めたい」と話している。