「この先どうなるか」/TPP交渉参加方針表明
不安募るキビ農家
野田佳彦首相が11日の記者会見で、環太平洋連携協定(TPP)交渉への参加方針を表明した。この会見を受けて全国の農業団体は一斉に反発。宮古でもサトウキビ生産農家をはじめとする農業関係団体から不満の声が上がった。生産農家らは「宮古の第一次産業が危うくなる。宮古はこの先どうなるのか」などと落胆し、交渉参加方針に対して不快感をあらわにした。
上野でキビを生産する川満長英さんは「宮古にはこれといった産業がなくてキビなど一次産業の振興が欠かせない」と強調。「宮古はキビの増産に向けて盛り上がりを見せている。その矢先の交渉参加のニュースはショックとしか言いようがない。サトウキビに与える影響を考えると、宮古に住む人は少なくなる」と憤った。
下地敏彦市長は「宮古島に限っていえば、キビと牛について農家の人たちの生活を脅かさないような制度を新たに作ってほしい。キビ価格制度の変更を余儀なくされるのであれば、その制度と同等あるいはそれ以上の制度を整備してほしい」と語った。
岡村幸男JAおきなわ宮古地区本部長は「TPP加入となった場合、宮古の農業は壊滅的打撃を受ける。2009年度の生産額をベースにすると宮古の農業への影響額は105億円、波及する分野を含めると386億円と試算している」と指摘。サトウキビはなくなり、国産牛肉のシェアも25%に落ち込むとした上で、「キビと肉用牛中心の宮古農業や地域経済、雇用を守るためにも反対行動を展開するしかない」と述べた。
キビへの影響額845億円/JA沖縄中央会試算
TPPへの参加は農業分野に大きな影響を与えると懸念されている。外国産の安価な農産物が大量にあふれるほか、関税撤廃に伴う財源不足で産業振興策が疎かになるという指摘だ。
JA沖縄中央会が試算した波及効果を含めた県内農業に与える影響額は▽サトウキビ845億円▽肉用牛245億円▽養豚155億円▽パイナップル17億円-など。「本県の農業基盤は壊滅的な打撃を受ける恐れがある」としている。
宮古地区のサトウキビ生産量は、県全体の約4割を占めている。それだけにTPPへの参加によって受ける打撃も大きい。
TPPは関税撤廃が原則であるため、輸入糖に掛けている調整金約500億円が失われる。調整金は生産農家に対する交付金(1㌧当たり1万6320円)の財源だ。調整金がなくなると交付金の財源捻出が課題となり、減額が議論の対象に可能性がある。このために農家の反発も強い。