サンゴ消滅の可能性/海中公園建設工事 移植での保存提案
水中ライトの影響も指摘/環境調査
海中トンネルを含む海中公園の建設に向け、予定地である平良字狩俣地区の陸上と海浜部分で行われてきた環境調査結果がこのほど、公表された。それによると、海中トンネル設置に伴う影響としてサンゴ類や海浜植生の消滅、水中ライトの影響としては海生生物の生活リズムの変化や周辺魚類相に変化が起こる可能性を指摘。その上で、サンゴの移植やライト照射範囲の縮小など保全対策を施すよう求めている。
調査は、市から業務委託を受けた沖縄環境分析センター(浦添市)が実施。期間は3月17日から5月14日までで、海浜植生や陸上動物、海草類とサンゴ類の分布状況、改変区域のサンゴ類の分布状況などを調べ、生物の生息環境への影響予測と評価を行った。
事業実施に伴う環境への影響を及ぼす計画としては▽海中トンネルの設置▽水産生物観察施設と水中ライト設置▽待合室と進入路など施設設置▽後背湿地の耕運作業-の4事業を挙げている。
海中トンネル設置に伴う環境保全対策と評価としては、海浜植生と海生生物、中でもサンゴ類の消滅を予測。直接、影響を受けるサンゴ類は約8500群体と推計していて、保全対策としては▽直接影響を受ける造礁サンゴ類は施工前に採取し、海中トンネル設置後改変区域に移植する▽工事実施に伴う改変区域を限りなく縮小し、サンゴが多く付着する岩盤などがある場合にはかく乱しない▽海底掘削の際は濁水が周辺に拡散しないよう汚濁防止装置を使用する-ことなどで影響は低減されるという。海浜植生については過度の伐採を避けるよう求めている。
水中ライト設置に伴うライトアップによっては、周辺に生息する魚類やそのほかの海生生物の産卵に関する生活リズムが変化することや、忌避行動による生物相の変化を予測。光源に集まったプランクトンなどが捕食対象となり続けた場合には、周辺の魚類相に変化が起こる可能性があるという。影響を低減させるためには、ライトの照射範囲の縮小やスポット的な照射の工夫を施し、場合によっては照射を中止するよう求めている。
安全管理施設や進入路、駐車場の設置では海岸植物の一部が伐採され、それに伴い風が通りやすくなることから、伐採個所周辺で乾燥による植物の立ち枯れが予測される。事業計画地の北側に位置する湿地には有機物を多く含んだ土砂が堆積していることが確認されていて、土砂運搬作業の際、硫化物を含んだ濁水が多く発生し、湿地全体に拡散することで動植物に影響を及ぼす恐れがあることから、濁水処理機などによる処理を行うことが望ましいとしている。