1戸平均の所得58万円減/キビ作農家を直撃
求められる所得向上策/収穫後地の有効利用カギ
宮古地区の2011-12年期産サトウキビの収穫が、このほど終わった。宮古では最も安定した作物だが、台風や日照不足などの影響で大不作となり、生産量は前期と比べ12万1000㌧(37%)減の20万2000㌧。農家の総手取り額は44億円と前期の74億円より30億円(40%)減った。キビ作農家を約5200戸として単純試算すると1戸平均の所得減は約58万円になる。不作が農家生活に及ぼす影響は大きいとみられ、農業所得安定と向上のために今後何をすべきかが、改めて問われる年となった。
不作はキビ作農家の中でも特に、キビだけを作っている単作農家に重くのしかかっている。
城辺のキビ専門の農家(男性、50歳)は今年2・1㌶を収穫し、60㌧出荷した。出荷量は予定していた105㌧より45㌧少ない。手取りも予定額の200万円から、80万円以上落ち込んだ。肥料や農薬代などを差し引いた約100万円の収入では、生活や営農を維持できず、借金をしてしのがざるを得ない状況にある。JAは今後そうした人が増えると予想し、その場合は「十分な対応をする」と話している。
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宮古の畑の生産性は、県平均と比べてかなり低い。宮古農業改良普及所(現在同普及課)は十数年前、原因は宮古の作物が収益性の低いキビに偏っているからだと分析し、年内操業によるカボチャなどとの輪作(土地有効利用)の必要性を訴えた。
JAのカボチャ栽培マニュアルは、10月から植えて、本土の端境期の1~4月出荷を目安に示す。5月にずれ込むと、国内や外国産と競合して、価格が下がるという。キビの年内操業の必要性は、収穫後の畑にカボチャなどを植えて、価格の高い1~4月出荷を可能にするところにある。カボチャの平年作の10㌃当たり手取り額は、15万円程度と露地作物の中では収益性が高い。
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「枝豆は年内操業にして12月に整地し1月に植えたら、4月には収穫できる」。伊良部地区で枝豆を契約栽培させている長浜勇人さんは、同作物の導入によるキビ収穫後地の有効利用は可能と話す。高く売れる時期は、年末から5月いっぱい。10㌃当たり手取り額は、多い人で20万円ぐらいになる。
年明け操業の場合のキビ収穫後地に向く作物としては、オクラやイモが有望視されるようになった。1月に植えたオクラは、4月上旬から収穫が始まり、6月まで取れる。JAの11年度の販売実績を見ると、39㌧を出荷しキロ単価は895円と高値だった。
市はイモの作型に①キビ収穫後植え②春植え③夏植え④秋植えの4パターンを示す。収穫は時期による偏りのない周年出荷を目指している。
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行政は、畑の有効利用法として、1年に1回収穫できるキビの春植や株出も推奨する。2年に1回収穫する夏植の場合、収穫時期の1~4月から、植え付け時期の9月ごろまでに、5~8カ月間の遊休期間があり、一年一作の株出と比べ利用効率が劣ることも理由の一つに示す。
株出は、根の芽を食い荒らす土壌害虫のハリガネムシに有効な新農薬の使用に伴い、数年前から徐々に増え、今年は特に目立つ。株出栽培のメリットには耕起・砕土費用や、苗代が要らないなどが挙げられている。
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今年、ハーベスターで収穫したキビは7万4000㌧で、全体の収穫量20万2000㌧に占める割合は37%。前期の28・5%と比べ8・5ポイント増えた。ハーベスターの利用増加は、その分の労力をカボチャ栽培など他の作業に振り分けることを可能にし、畑の有効利用に結び付く。工場管内別の利用率は、高い順に沖縄製糖宮古工場42・5%、宮古製糖多良間工場41・5%、同城辺工場39・7%、同伊良部工場15・7%となっている。
農業所得の安定には、自然災害による損害を補てんする農業共済制度への加入が求められている。今期のキビ生産量は、台風接近が多く平成のワースト記録となっていた04年産の21万7000㌧を更に下回った。