マムヤ伝説を小説化/宮古の行事や遊び盛り込み
宮古島市平良出身の民謡歌手、古堅宗揮(そうくん)さん(66)=沖縄市在=が書いた初めての小説「マムヤの涙」が11月に文芸社(東京)から全国発売される。東平安名崎に伝わる悲恋の美女マムヤの伝説を基に、神々が住む天上界と人間が生きる下界を舞台にした恋愛物。宮古島の風土や方言、行事、遊びなどもふんだんに散りばめて笑いと涙の感動作に仕上げた。
構想したのは約10年前。2008年に小説と同名のCD発売に携わり、映画化の構想がますます膨らんだ。せりふとト書きだけで構成した脚本を書いたが、それを小説に書き直して出版社に持ち込んだところ評価され、発刊されることが決まったという。
物語は、マムヤを天女として描いた。天上界のマムヤは宮古島の青年に一目ぼれし、会うために人間界に降りていく。オジーやオバーたちなど島人の情熱を感じながら恋人との楽しい日々。しかし、やがて悲しい別れがやって来る…。
サニツ(浜下り)や旧盆、十五夜、ハーリーなどの年中行事やクイチャー、ギッチョー遊びなどを盛り込みながら、島に生きる人たちの大らかさを紹介。台風襲来など自然と向き合う姿も生き生きと描写した。
「宮古島の活性化のために私にできることは何かと考えた。生まれ育った宮古島に感謝を込めて書いた」と古堅さん。小説は単行本で約300㌻の大作になる予定だが「思い入れが強かったので、書くのは苦にならなかった。小説で宮古島の史跡巡りを楽しむこともできる」と笑顔を見せた。
父は、宮古民謡保存研究会初代会長の古堅宗雄さん(1903-1985)。幼いころから、父が三線なしのアカペラで歌う「平安名(ぴゃうな)のマムヤ」を聞いて育ったことも「小説を書くきっかけになった」
現在は、宮古民謡古堅流家元二代目として沖縄市に音楽事務所を開設し、民謡のみならずさまざまなジャンルの音楽を指導している。日本作詩・作曲家協会会員。