宮古・石垣に陸自配備/中国を意識、防衛省が検討
先島諸島周辺海域での中国海軍の活動活発化を受け、防衛省が石垣島や宮古島への陸上自衛隊の配備を検討していることが20日、分かった。自公政権当時に陸自配備が検討された日本最西端の与那国島と併せ、具体的な配備先や規模について調整を本格化させる。
これに関し、北沢俊美防衛相は同日の記者会見で「先島諸島の防衛拠点は極めて重要だ。(部隊配備の)検討を前向きに進めたい」と述べた。配備が具体化すれば、国境が近い中国や台湾の反発を招くのは必至だ。
石垣島や宮古島へは、陸自普通科(歩兵)を中心に数百人規模の配備を想定。与那国島には数十人規模の配備を検討している。
防衛省幹部は�日、「隊員の生活基盤を考えると、基地は石垣島か宮古島に置きたい。ただ、地元に大きな影響のある話なので、駐留先は慎重に調整しないといけない」と語った。
北沢防衛相は既に、先島諸島への陸自配備に向け、2011年度予算概算要求に調査費を計上する考えを表明。今年3月には、与那国島を視察している。
防衛省は、年内にまとめる新たな防衛計画大綱と次期中期防衛力整備計画(中期防)で、島しょ防衛の強化を打ち出す方針。この中で、自衛隊の「現地駐留」の重要性を強調する見通しだ。
地元関係者に波紋/「危機感」、「容認」論も
防衛省が先島諸島に陸上自衛隊を段階的に配備する方針を示していることに関し、宮古島市の関係者に波紋が広がっている。
下地敏彦市長は19日に報道機関からの取材で初めて知ったという。「情報がないので何も分からない。宮古島市に対して直接そういう行動があるということを聞いたこともない。具体的内容が分からない段階ではコメントできない」と述べた。下地市長はまた、陸上自衛隊が下地島空港を利用する可能性については「(政府から)いきなりはうち(宮古島市)にはこないと思う。下地島空港は県営の飛行場であり、一応は家主(県)に相談があって、その後地元に『どうですか?』とくるのではないか」と語った。20日に行われたマスコミ定例会で各社の質問に答えた。
下地島の軍事利用に反対する、みやこ九条の会共同代表の星野勉さんは「国境の島々への自衛隊配備は、国際間の緊張関係を引き出し、住民は不安な生活を強いられる。どんな理由があっても反対」と表明。また「憲法九条では、国際間の紛争の解決には武力を行使しないことや、そのための武力を持たないとうたっており、軍事的配備は憲法に違反する」と指摘した。
一方、宮古島への自衛隊誘致を主張してきた宮古島商工会議所の中尾英筰会頭は、個人的な見解と前置きした上で「急患の迅速輸送や不発弾処理の迅速化、訓練の一環としての海浜清掃、宮古島出身自衛隊員の出身地勤務促進、人口増による地域活性化など、メリットは多い」と強調。「自分の国は自分で守るという普通の考えからして、国防上の沿岸警備は一番大事」とも述べた。