「正しく知ること必要」/南静園市民講座
ハンセン病問題でフォーラム/パネリスト5人が意見発表
南静園ボランティアガイド・市民講座2012(主催・ハンセン病と人権市民ネットワーク宮古)の第1回が28日、国立療養所宮古南静園総合棟講堂で開かれ、証言朗読と基調講話、フォーラムが行われた。フォーラムでは「ハンセン病問題のこれから」をテーマに、5人のパネリストがそれぞれの立場から、今なお続く偏見や差別の問題解消に向け、ハンセン病について正しく知ることの必要性などを訴えた。
パネリストとして登壇したのは、宮古退所者の会の知念正勝代表、基調講話の講師を務めた盈進中学高校(広島)の延和聰教諭、久松小・中学校PTA役員の上松朋子氏、市福祉保健部の国仲清正部長、宮古南静園の中村明洋事務長の5人。
知念代表は、「ハンセン病は恐ろしい病気という間違った考えが広められた結果、退所者の多くは今も、隠れるように暮らしている」と同園退所者の現状を説明。「そういう状況を解決しなければハンセン病問題も解決できない。まずはみんなが正しい知識を持つことが必要」との考えを示した。
南静園だけでなく全国の療養所で職員が削減されていることを「深刻な問題」と指摘する知念代表。「食事を食べさせる職員が足りず、ご飯とおかずを混ぜて出され、自分で食べるよう求められている人もいる。犬や猫のようで人として生きていると言えない状況」と訴え、国に改善を要求する方針を明らかにした。
延教諭は、人権侵害を受けながらも懸命に生きてきた全国の療養所入所者について「その生き方を伝えていかなければならない。子どもたちには、しんどい思いをしながらも生きるということを学んでほしい」との思いを述べた。
上松氏は久松小・中学校で行っている人権学習について紹介。「ハンセン病の問題について小中学生に正しい知識を知ってもらうことで親にも理解してもらい、地域に正しい輪を広げたい」と語った。
国仲部長は「宮古島の子でも南静園がどこにあるのか知らない子もいると思う。勉強の一環として社会見学の場の一つとしても良いと思う」と学校教育に南静園を取り入れることを提案。中村事務長は「現在の入所者81人と退所者数人がいつでも治療を受けられる施設にしなければならない。さまざまな記録を保存し公開する人権啓発交流センターのような施設の整備も必要と思う」と語った。
今回の市民講座には約170人が参加。開会式ではハンセン病と人権市民ネットワーク宮古の共同代表も務める知念代表と南静園の新城日出郎園長があいさつを行った。証言朗読では、宮古高校の放送部員3人が「宮古南静園証言集」を朗読した。
同講座の第2回は8月4日、南静園でフィールドワークなどが行われる。