サンゴ移植 長期継続を約束/海中公園工事被害原因裁定
市と申請者で調停成立
市内のエコツアー会社の代表が、市による宮古島海中公園工事と周辺海域の水質汚濁やサンゴ礁死滅との因果関係について、国の公害等調整委員会に法的判断を求める原因裁定申請を行っていた事案で、申請人と被申請人である市とで17日、調停が成立した。調停条項では、今後、長期継続した事業として効果的なサンゴの移植、移設、再生を実施することなどを約束している。
海中公園工事による水質汚濁被害原因裁定申請は、市が狩俣地区の海に建設した海中公園工事の影響で、周辺海域のサンゴ礁が死滅していると主張するエコツアー会社代表の猪澤也寸志氏が2011年2月、総務省に提出した。
それを受理した同省の公害等調整委員会は同年4月に現地調査を実施。双方から意見を聞く第1回審問は12年5月に行われたほか、同6月には専門委員が「工事の影響がサンゴに表れた」とする報告書をまとめ、委員会に提出した。その後、委員会から調停による和解が提案され、同10月に調停条項案が提示された。
調停条項案の内容は、▽今後行う公共工事で海洋水質汚濁の防止とサンゴ礁などの自然環境保全のため、波浪や時化による汚濁防止幕の破損や防止幕設置区域外への濁水の流出、拡散が発生しないよう、工事の計画と施工に最善を尽くす▽海中公園施設周辺その他のサンゴが死滅、破損した海域または移植できなかった海域で、長期継続した事業として効果的なサンゴの移植、移設、再生などを積極的に行う▽同海域でサンゴ礁保全や環境保全のための取り組みを積極的に推進するため必要な予算を確保する-ことなどを約束するものとなっている。
調停の締結は那覇市内のホテルで行われ、委員会が示す調停条項案に双方が合意し、市の代理人と猪澤氏が調停を調印した。
調停成立について長濱政治副市長は「委員会から調停の提案があったので、それを受けることにした。調停条項は順守する。サンゴの移植などについては、まず現状調査を行いたい」としながらも「ただ、サンゴ被害の原因がすべて市の工事にあるとする申請人の主張を認めたわけではない」との考えを示した。
猪澤は「サンゴと自然環境保全のため、公共工事を工事計画段階から最善を尽くすとする、かなり踏み込んだ調停が結べた。死滅サンゴの復元に長期にわたって取り組むことも盛り込まれた。今回の調停を機に、これからはサンゴ礁海域での公共工事の模範を宮古島が示してほしい」と語った。