「脇役商品の開発必要」/宮古の織物文化シンポ
流通拡大、存続で提言
「宮古の織物文化~未来へ向かって~」(主催・市、市教育委、宮古の織物文化研究協議会)の関連行事として3日、市中央公民館で、5人のパネラーによるシンポジウムが開かれた。パネラーからは本上布の生産だけでなく、ラミー(ジャワ、スマトラ、中国産苧麻)や絹を用いた「脇役商品」の開発が必要だとする意見などが出され、今後、上布の流通拡大と宮古織物事業協同組合が発展存続していくための具体的な方法論が示された。また、2013年度に市が建設を予定する新伝統工芸館の運営方法などにも提言がなされた。
パネリストは富山弘基氏(日本染織文化協議会副会長)、小橋川順市氏(沖縄伝統工芸団体協議会会長)、石垣昭子氏(紅露工房主宰)、上原則子氏(宮古織物事業協同組合専務理事)、基調講演を行った藤原大氏(DAIFUJIWARA代表)の5人が務めた。琉球大学教育学部の片岡淳教授が進行役を務めた。
シンポジウムで富山氏は、希少価値の高さから宮古上布は存在そのものが着物業界や消費者から忘れられつつある危機的状況を指摘した上で、「京都の呉服屋には一反もなく、仕入れた店も売る気がない」との現状を説明。「ラミーや絹を用いた脇役商品を開発し、本上布生産と区別して忘れられない商品の確立を目指すことが大事だ」と提言した。
これに対し、西表島で工房を営む石垣氏は「自分はもっぱら脇役に徹している」と述べ、絹などは紡績では出せない糸作りの面白みがあることなどを説明した。
上原氏は「ラミーを使った商品は組合でも生産しているが、それが主流になってしまうことに怖さを感じる。反対する組合員もいると思うので今後、組合内で協議したい」と述べた。
小橋川氏は「絹製の脇役商品があっても良いのではないか。実際、宮古では絹織りの上布も存在した」と説明し富山氏の提言に賛同した。
藤原氏は「制作者一人一人の質の高い技術が要求される時代になった。世界の教育交流の場となる空間を宮古で作ってはどうか」と提案した。
フロアーとの質疑応答で、東京で着物誌編集に携わるという田中敦子さんは「紡ぎ糸生産者、染め手、織り手が協働している上布生産にあらためて感動した」と述べ、宮古織物業の発展にエールを送った。
このほか同シンポでは、県内外の伝統工芸村の成功事例を紹介し、新伝統工芸館建設に当たっては、地域社会とつながるコンセプトにする工夫が必要だとの提案があった。