睡眠が学力向上の鍵/調査結果示し訴え
琉大・笹澤准教授が講話/市教委主催
市教育委員会主催の教育講演会が5日夜、マティダ市民劇場で開かれた。琉球大学教育学部生涯健康教育コース准教授の笹澤吉明氏が「睡眠と学力」をテーマに睡眠が学力へ与える影響について、さまざまな調査結果を基に講話。勉強などで一時的に脳が覚えた記憶は、しっかりとした睡眠を取ることで長期的記憶に置き換えられることなどを説明し、睡眠の重要性を訴えた。
同講演会は学力向上の基盤となる基本的な生活習慣である睡眠を切り口として、子どもたちの今後の学力向上について市民全体で考えるきっかけとすることなどを目的に開催された。
講演会の演題は「寝る子はでぃきやーないんどー(勉強ができるようになる) 規則正しい睡眠習慣は児童生徒の学力を向上させる」。笹澤氏は睡眠の種類にレム睡眠とノンレム睡眠があり、レム睡眠は体が休む時間で、ノンレム睡眠は脳が休む時間であることを説明した。
総務省の調査によると、日本人の睡眠時間はこの30年間で約30分減少していることを紹介する笹澤氏。世界の11歳児の睡眠時間はカナダが10時間15分、アメリカが9時間20分であるのに対し、日本は8時間30分。15歳以上の国民の平均睡眠時間の比較を見ても主要国が8時間台なのに対し、日本は7時間50分と世界的に見ても睡眠時間が短いことを指摘するとともに、「キレやすい」中学生ほど夜型が多く、学校でも居眠りの頻度が高いとの調査結果も示した。
笹澤氏らが2010年県内の小学6年生981人、中学3年生1051人に実施した調査によると、睡眠時間が6時間未満の短眠者の割合は小学生が5%、中学生は20%と、本土での調査結果と比べ2~3倍ほど高いことが判明。短眠、不眠型の子どもほど学力が低くなるとのデータを示し、不十分な睡眠が学力向上に悪影響を及ぼしているとの考えを示した。
学習で脳が覚える記憶には、短期的な記憶と長期的な記憶があると語る笹澤氏。短期的記憶を長期的記憶として脳に定着させるためには、記憶を整理するレム睡眠を経てノンレム睡眠に入ることで記憶が固定化されることを説明し、「真の学力を考えると、睡眠不足で勉強をすることに意味はない。ちゃんと勉強をして、ちゃんと寝る習慣を付けることが大切」と学力向上のためにはしっかりとした睡眠が不可欠との考えを強調した。
会場には教育関係者や高校生らが多数来場し、笹澤氏の話に聞き入っていた。
同講演会は6日午後に伊良部公民館でも開催された。