南静園の戦跡巡る/市総合博物館主催
偏見差別と戦争被害を学習
市総合博物館が主催する慰霊の日関連行事、「宮古南静園の戦跡見学と講話」が14日、同園内で開催され、一般の参加者を含む32人が同平和学習に参加した。太平洋戦争当時、ハンセン病への偏見や差別に加え、戦争被害という過酷な状況に置かれた入所者の二重の苦しみについて学んだ。
同園内文化センターで開かれた講話では「ハンセン病と人権市民ネットワーク宮古」の知念正勝共同代表が「ハンセン病とはなにか」と題して、感染症の一種であり、現在では治療方法が確立された同病の感染から発症、症状までを説明した。同ネットワーク宮古の亀浜玲子さんが「ハンセン病隔離と宮古南静園の戦争被害」とのテーマで、「無らい県運動」などの差別の歴史や宮古療養所(同園の前身)の設立経緯などについて、プロンプターで資料写真を映しながら解説した。
同園に9歳で入所し、太平洋戦争当時を園内で過ごした「宮古退所者の会」の上里栄さんが、園内での戦争体験を語った。上里さんは園内にあった「少年舎」が戦争が劣悪を極めた1944年に閉鎖され、45年3月の空爆で、園の人たちは東側海岸で避難生活を強いられたことなどを講話した。
水源地に近かったことから、「ぬすとぅガマ」と呼ばれる自然壕にほとんどの人が避難生活を余儀なくされ、飢えやマラリアで多くの命が犠牲になったことなどを話した。上里さんは「戦争は絶対にしてはいけないことだ」と述べ、講話を締めくくった。
その後、参加者らは同園ボランティアガイドの案内で、戦争当時の避難場所である「ぬすとぅガマ」の中に入り、上里さんから当時の壕内の様子などの説明を受けた。初めて同講座に参加したという宮國恵里子さん(42)は「同世代の親たちは宮古の戦争や南静園の苦難の歴史について知らない人がほとんどだ。次世代に戦争の実相を伝えるという大事な役割もあるのだと強く感じた」と同講座に参加しての感想を話した。