宮古諸島の人々 ルーツは日本由来
ピンザアブ洞穴人は「祖先ではない」/琉大研究グループら調査
琉球大学大学院医学研究科の佐藤丈寛博士研究員と木村亮介准教授らで構成される共同研究グループはこのほど、現在の琉球列島に住む人々の遺伝的な成り立ちをヒトゲノム多様性データから明らかにした。宮古諸島の人々は大陸や台湾の先住民と遺伝的なつながりはなく、日本(本土)に近い遺伝系統が確認されたという。また、宮古の人々は最大でも1万年前より後の時代に沖縄諸島から移住したと推測。この結果を踏まえ、2万6000年前に宮古に存在していたとみられるピンザアブ洞穴人は「宮古の人々の主要な祖先ではない」とした。
琉大ほか北里大学や統計数理研究所などで構成される共同研究グループは、沖縄諸島と宮古諸島、八重山諸島出身者の約350人からDNAを採取し、ヒトゲノム全域に分布する単一塩基多型(SNP)と呼ばれる変異を分析した。
これによって得られたデータを近隣集団のゲノムデータと比較した結果、沖縄諸島、宮古、八重山のいずれの人々も大陸の集団のみならず、台湾の先住民とも遺伝的なつながりがないことが明らかになった。
また、琉球列島の人々と台湾先住民は別系統の集団であり、地理的に隣接する八重山諸島の人々ですら台湾先住民との間に直接の遺伝的なつながりがないことも分かったという。
木村准教授は「アジア全体を通してみると、系統は日本(本土)に近い」などと話し、これらの分析から宮古を含む沖縄の人々のルーツが日本に由来していることを示唆した。
この結果、宮古、八重山諸島の人々は沖縄諸島から南下して移住したとみられる。また、DNA情報から遺伝的な距離を導く調査によると、移動は古くても完新世(1万年前以降)であると推定。従って約2万6000年前に宮古諸島に存在したとみられるピンザアブ洞穴人や、約2万年前の白保竿根田原洞穴人(八重山)は「現在の宮古・八重山諸島の人々の主要な祖先ではない」と結論付けた。
一方、約1万8000年前に沖縄本島に存在したとみられる港川人と、現在の琉球列島の人々との遺伝的な関係を否定することはできなかったという。
ただ、今後の精査の必要性を認めた上で、「港川人もまた、沖縄諸島の人々の主要な祖先ではない可能性は高い」とまとめた。