天然ガス、温泉活用など模索/利活用へ検討委設置
課題は詳細データの確保
天然ガスおよび付随水の利活用を検討する委員会が28日、設置された。第1回委員会では城辺保良地区で実施された試掘調査の結果を共有。すでに付随水を温泉として利用することは可能な状態にあることを確認した。課題は天然ガスに関するさらに詳細なデータの確保。民間でも事業に踏み切れるデータの充実について意見を交わした。今後は試掘本数を増やしてデータの充実を図るか、現状の汲み上げ量の範囲で利活用を推進するのかという点が議論の柱になりそうだ。
検討委員会は、行政機関および学識経験者、経済団体、ボランティア団体の代表らで構成。試掘調査の結果を踏まえ、天然ガスや副産物である付随水の課題や問題点を検証して利活用の促進を図る。委員長には長濱政治副市長が就いた。
天然ガスの試掘調査は2012-14年度に宮古島市と南城市、那覇市の3市で実施された。宮古島市は城辺保良の「城辺ぱり鉱山宮古R-1号井」で試掘が行われ、深度2437㍍まで掘削した結果、天然ガスの存在が裏付けられた。
産出ガスの量は1日当たり530立方㍍、産出水量は同618㌔㍑だった。ほかの2市に比べて水温が高いのが特徴だという。
検討委員会では、これらの結果を県産業政策課が報告。その後の意見交換で付随水を温泉として利用できる可能性に触れた。
委員の一人は、「現実的には温泉だと思う。自然のど真ん中に温泉ができれば観光客も訪れて観光の振興が図られる」と提言。別の委員も「冬の観光はどうしても弱くなるので、一つのインパクトとして温泉は大きいのではないか」と賛同する意見を述べた。
天然ガスの利活用は温泉に限らない。天然ガスとともにくみ上げられるかん水を原料とするヨウ素の生産なども注目される。
ヨウ素はさまざまな化合物に加工され、レントゲン造影剤や医薬品、農薬、殺菌消毒剤、写真感光剤、工業用触媒、液晶表示板の偏光フィルムなどで利用されている。仮に、このヨウ素を生産できれば事業展開の幅は大きく広がる。
このほか、くみ上げる天然ガスで発電し、観光農園など農業施設の電力として活用する方法もある。
ただ、これらの事業を展開する上ではデータ量が不足している。今後新たな掘削が必要になるが、一本数億円に及ぶ掘削予算の捻出は大きな課題になる。
検討委は今後、観光や農業などあらゆる分野で活用の可能性を探る。次年度も引き続き検証を重ねる。
委員は次の通り。
委員長=長濱政治(副市長)▽副委員長=古堅宗和(市企画政策部長)▽委員=中山道哉(沖縄振興開発金融公庫宮古支店長)、座安治(県産業政策課副参事)、平良正彦(県宮古農林水産振興センター農業改良普及課長)、下地義治(宮古島商工会議所会頭)、豊見山健児(宮古島観光協会長)、神里裕哉(宮古青年会議所理事長)、比嘉正市(沖縄電力宮古支店長)、我那覇薫(りゅうせき宮古支店長)、新城武一郎(JAおきなわ宮古地区本部長)、斎藤利夫(NPO法人ボラボラネット理事長)、安谷屋政秀(市総務部長)、村吉順栄(市農林水産部長)、下地信男(市観光商工局長)