「エコの島」の未来展望/スマートコミュニティー事業
ビジネスモデルを構築/シンポジウムで意見交換
島嶼(とうしょ)型スマートコミュニティー形成の可能性を探るシンポジウムが18日午後、宮古島市中央公民館で開催された。実証報告ではエネルギーの「見える化」や省エネ、需要家に電力の消費調整を依頼するデマンドレスポンス(DR)を柱とするビジネスモデルの提案があった。有識者らパネリストと会場の市民は「エコの島」の未来を展望し、島内における新たなエネルギー受給システム構築の可能性を探った。
島嶼型スマートコミュニティー実証事業は、エネルギーの自給率を高め、新しい受給システムを構築しながら新たなビジネス展開の可能性を探る事業だ。
2011年度から4年間にわたって実施。市全島エネルギーマネジメントシステムおよび来間島再生可能エネルギー100%自活実証事業を推進する委員会を設置し、有識者がテーマごとに議論を重ねてきた。
具体的な取り組みとしては、家庭や事業所、地下ダム関連施設で電力の「見える化」を推進した。電気の使い方が一目で分かるシステムを活用して広く市民の意識高揚を図った。
この結果、一般市民と事業者(電力会社)が一体となり、電力需要のピークを低く抑えるピークカットや再生可能エネルギーを最適に消費する地域社会づくりが必要と指摘した。
方法として、新たな事業体を設立し、需要家(電気を使う側)に省エネやピークカットによる電気料金削減サービスを提供、その対価を得るというビジネスモデルの提案があった。
このような電力消費調整依頼(DR)を事業体そのものが行うため、電気事業者からインセンティブ効果に係る収入を得られる可能性もメリットとした。
課題としては収益性の確保などを挙げた。結果を報告した市エコアイランド推進課は、現段階では需要家向けサービス収入の規模が見込めないことや、運営コストの詳細な洗い出しが必要になるとした。沖縄電力との協力関係の構築も欠かせないと明示した。
ただ、「エネルギー自給率の向上や低炭素社会システム構築など公共的・公益的な意義は極めて大きいプロジェクト」とも強調。アンケートで「島のためならやる」という意見が多いことを踏まえ、ビジネス化に向けては自治体が積極的に関与することも含めて検討を進める方針を示した。
来間島再生可能エネルギー100%自活実証事業の報告もあった。この中で▽再生可能エネルギーを効率的に利用することの難しさが判明▽技術的・経済的な課題克服が必要-とした上で、「県内に数多く存在する独立系統離島の研究・実証拠点として、このような特性を生かしていく価値がある」とまとめた。
この発表を踏まえたシンポジウムは有識者ら7人で行われた。パネリストは東京大学大学院の相田仁教授をはじめ明星大学の伊庭健二教授、琉球大学の千住智信教授、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部の野崎開太政策課課長補佐、県商工労働部産業政策課の金良実課長、市の長濱政治副市長、資源エネルギー庁長官官房総合政策課の大金修一さんの7人。早稲田大学大学院の林泰弘教授がコーディネートした。
パネリストはそれぞれの立場から提言した。会場の市民は実証事業の成果と課題を確認し、島内におけるスマートコミュニティー形成の可能性を探った。