アーサ採ったらだめ
海保が「警告書」/「漁業権侵害」通報受け
お年寄りショック「昔からの慣習」
宮古島の海岸などで自生する海藻の一種ヒトエグサ(宮古方言・アーサ)を採取したとして、宮古島海上保安署が市内に住む70代と80代の女性2人に「警告書」を出していたことが18日までに分かった。女性は昔から食用としてアーサを採取していたとして「こんなことは初めて」とショックを隠せない様子だ。海保は「漁協組合員から118番通報があった」と述べ「漁業法に抵触し漁業権を侵害したもので注意した」と話している。
女性2人は1月22日午後、下地与那覇湾南側の海岸でアーサを採っていたところ、海保から警告書を受けた。採ったアーサは海に戻すよう言われ従ったという。
2人は毎年1月中旬から3月ごろまで、同海岸でアーサを採るのが恒例になっていて、採ったアーサは自分で食べたり、近所にお裾分けしたりしているという。
70代の女性は「アーサは子供のころから採っている。季節物で浜下りとして楽しんでいた。今まで何の注意もされなかった」と戸惑い気味だ。
80代の女性は「採ったアーサで商売しているわけではない。自分が食べる分と隣近所か親戚に分ける分しか採らない」と説明している。
イセエビ類やヒメジャコなどを漁協組合以外の人が取った場合、漁業者は漁業法に基づき漁業権の侵害として訴えることができる。
県宮古農林水産振興センター農林水産整備課漁港水産班によると、漁協組合以外の人が取ってはいけないいわゆる「漁業権対象種」にアーサは1974年11月1日に新たに追加されている。
周知広報については県のホームページや市の「広報みやこじま」「宮古島市暮らしの便利帳」などに掲載しているが、長年にわたり慣習としてアーサを採ってきたお年寄りたちにはいまひとつのみ込めないというのが実情のようだ。
同水産班は「今後の周知については、市や漁協など関連機関と協力しながら取り組んでいきたい」と話している。
アーサの採取に漁協組合員が神経をとがらせる背景について水産関係者は「以前に比べて資源が少なくなっている半面、養殖など水産分野の成長産業として伸びてきていることが理由ではないか」と話す。
別の関係者は「自然のアーサを採取し販売している人もいる。そういった人たちが増えると、資本を投じてアーサ養殖をしている人たちの生計を脅かす懸念がある」と言う。
宮古島漁業協同組合の粟国雅博組合長は「漁業者は水産資源の恵みを受けて、漁業を営み生活の糧としている。同時に、ただ利益を得るだけでなく、資源を適切に管理する役割も担っている」と指摘。2013年9月に新たに漁業権対象種に追加されたタコを挙げ「最近ではタコを捕るために漁協組合員になった人も多い。組合員になればアーサだけでなく、漁業権の対象となっている貝や海藻を採ることは可能」と述べ、まずはルールを守ることの意義を強調している。
同漁協によると組合員になるためには「出資金」7万5000円が必要という。