子宮頸がんワクチン副反応㊤
意識消失などの症状発症/検査、入院の連続で生活激変
本人、家族困惑の日々
がんを防ぐワクチンとして、国が積極的に勧奨してきた子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)。2010年に公費負担となってから宮古島市でも11年から中高生を対象にした集団接種がスタートした。しかし、接種後、全国で副反応を訴える事例が報告された。厚生労働省は2年前の13年にワクチン接種の積極勧奨を中止したが今年に入り、宮古島市でも健康障害を訴える症例が複数報告された。健康障害で苦しむ接種者は依然として具体的な治療法もない中、家族と共に先の見えない苦しい日々を送っている。副反応に苦しむ家族の様子を紹介する。
■ 変化
市内に住む40代のAさんは同じ年齢の夫と、大学生の長男(20)、高校3年生の長女(17)、中学2年生の二男(14)、二女(6)の6人家族。
高校3年生の長女は、中学2年生だった11年に計3回のワクチン接種を行い、それから体調が徐々に変化し始めた。
接種後まもなくして口唇ヘルペス、腕の痛み、頭痛、虚脱感、起立性障害などの症状で体調が悪化。そうした厳しい状況下で受験を乗り越えて高校に入学した。
2013年春に高校に入学してからは、さらに状態は悪くなった。入学後の1カ月間だけでも、頭痛やめまい、手足のしびれなどで何度も校内で倒れ、担架で保健室に運ばれた。
高校では、中学校時代にやってきたバスケットボール部に入ることを目指していた長女だが、入部を希望した際に監督からは「体調面で厳しい」と断られた。
入学してから1カ月が過ぎた5月。担任に呼ばれたAさんは、長女の校内の様子が細かく記された資料を見て驚いた。それには「担架で運ばれる」の文字が列び、校内で何度も意識消失した状況が示されていた。
■ 入院
原因不明の体の痛みや意識消失など、長女の体の状態はさらに悪化していく。6月のプール授業の際には、過呼吸を起こして溺れ保健室に運ばれた。運ばれた際に呼吸をしていなかったが、たまたま校内にいた医師の心臓マッサージで息を吹き返し一命を取り留めた。
そして10月末のロードレースの練習後、1時間ほどけいれんが続き、意識消失。学校側からAさんに救急搬送するとの連絡があり、県立宮古病院に搬送された。
■ 症状
宮古病院での2週間の入院中も、毎日のようにけいれんが起こり、発作を止める注射を何度もされた。
入院中は1人で歩けなくなり、友人が見舞いに来ても、帰った後には誰が来ていたのか分からないなど記憶障害も出始めた。
11月に沖縄本島の南部医療センターで受診し、処方された薬でけいれんは抑えられた。その後、同院に入院して検査を行い、2年生になってからは月に1回の通院となった。
通院しながらも状態は良くならず学校では、手や足が動かなくなったり、階段を下りているときに急に足が動かなくなるなどの症状が頻繁に出始めた。
■ 原因
原因不明の健康障害に苦しむ日々が続いたが、今年1月に民放テレビの報道番組を見て、事態は一変した。
友人から「きょうの夜のニュースを見て」と言われ、録画しながら家族で見ていたら、子宮頸がんワクチンの副反応を紹介する内容だった。
そのときの様子について、Aさんは「録画した番組を何度も家族で見直して症状がとても似ていると思ったし、ワクチン接種による副反応だと確信した」と話した。
ワクチン接種後3年以上が経過してようやく家族は、長女が苦しんできた原因と思われる理由にたどり着いた。
宮古島市では、同ワクチンを接種した1632人に対して現在、実態調査を行っているほか、その医療費や渡航費などの助成決定を今月1日に発表した。一方、国もワクチン接種と副反応被害との因果関係を調べる追跡調査を実施中だが、被害を訴える患者の救済は進んでいない。
子宮頸がん 子宮の入り口付近にできるがんで、20~30代の女性がかかるがんで最も多く、20年ほど前から急増。性交渉によって、「ヒトパピローマウイルス(HPV)」の感染により、発症する。
国内では年間約9000人が発症し、約2500人が死亡している。ワクチン接種は、性行為を経験する前の11~14歳が最も効果的とされている。
予防ワクチンは、海外ではすでに100カ国以上で使用。接種回数は合計3回。接種時期は初回接種後、1カ月後に2回目を、6カ月後に3回目を接種する