無土器期、イノシシ飼育か/沖縄考古学会宮古島大会
先史ひもとく資料続々/研究者5人が発表
2015年度沖縄考古学会の総会並びに宮古島大会が13日、宮古島市中央公民館で開催された。5人の研究者が登壇し、宮古島の無土器期(先史時代)からグスク時代への移り変わりに関する研究成果を発表。浦添市教育委員会の菅原広史さんは、友利元島遺跡の発掘調査を基に、無土器期の人々がイノシシを飼育していた可能性に言及した。会場の市民は先史をひもとく報告と貴重な資料の数々に強い関心を示した。
沖縄考古学会の大会が宮古島市で開催されるのは初めて。近年、5~8世紀の友利元島遺跡や11~15世紀前半のミヌズマ遺跡で発掘調査が行われており、同学会ではこの二つの時期の接点を多角的に考察することを目的に宮古島開催を決めた。考古学への関心を深めることも狙いだ。
発表に先立ち、同学会の當眞嗣一会長が「県内の考古学の成果は目を見張るものがあるが、その中でも宮古は近年、多くの成果が発表されており、古い時代のことが少しずつ分かってきている」と話し、宮古の研究者の努力をたたえた。その上で「このような貴重な遺跡に目を向け、宮古島の歴史・文化の魅力に触れていただきたい」と述べた。
この後、宮古郷土史研究会の下地和宏会長が基調講演で無土器期・グスク時代初期の課題を報告。引き続き島内外5人の研究者がそれぞれの立場から研究してきた成果を発表した。
浦添市教委の菅原さんは無土器期における脊椎動物の遺体を研究している。発表では、友利元島遺跡が海と面しているにもかかわらず、魚よりイノシシの骨が大量に出土している結果を重視。「特異な結果。どのような理由でこのような傾向になってきたのか大変興味深い」と述べた。
さらに遺体が雄に偏重している状態を「不自然」と指摘し、「人為的な管理下にイノシシを置いていた可能性が想定できる」として飼育の可能性に言及した。
ただ、これが友利元島のみの特異性なのか、宮古島全体の標準的な様相であるかについては資料の積み上げが必要とした。
元沖縄国際大学教授の江上幹幸さんは、「無土器期の位置づけ」と題して発表した。この中で「どこかの地から焼石調理法を携えて移動を開始し八重山諸島を経由してではなく、彼の地から直接、あるいはどこかを経由して宮古島に居住したと考える」と考察。無土器期前半の宮古島に、八重山諸島とは異なる文化系統が存在していたとする可能性についても触れた。
その上で「長期にわたり土器を使用せずに特異な生計戦略で生活を営む人々の痕跡がアラフ遺跡には残存している」とし、さらなる解明に期待を込めた。
大会ではこのほか、浦添市教委の安斎英介さん、鹿児島大学埋蔵文化財調査センターの新里貴之さん、宮古島市教委の久貝弥嗣さんも研究成果を発表した。