第三龍虎隊慰霊碑に献本/直木賞作家・古川さん
「君死に給ふことなかれ」
山口県下関市在住の直木賞作家、古川薫さん(90)が海軍の九三式中間練習機、通称「赤トンボ」で宮古島から特攻出撃した第三龍虎隊士を描いた作品「君死に給ふことなかれ」(幻冬舎)の献本式が29日、第三龍虎隊の慰霊碑(平良二重越)で行われた。古川さんは「第三龍虎隊の生きざま、散りざまを追った本をお供えして、鎮魂の祈りをささげる」と祭文を述べ、恒久平和を訴え。「(龍虎隊の7人は)青空で旋回しながらお礼をしていると思う。感激の1日」と語った。
献本式には古川氏の妻で歌人の森重香代子さんが「挽歌宮古島にて」と題した歌を詠み、山口県下関市で会社を経営している上田玲子さんがハーモニカで「赤とんぼ」を演奏した。
地元からは下地敏彦市長や宮古テレビの藤村明憲社長が出席し祝辞を述べた。
下地市長は「戦争体験者の高齢化が進み、戦争の悲惨さを身を持って伝えられる方が少なくなっている」と指摘。その上で「一人でも多くの方がこの本に触れることにより、戦争の惨禍を風化させることなく、平和の尊さを再認識することにつながればと期待している」と語った。
式の冒頭、古川さんは、神風特攻第三次龍虎隊の7人の名前を呼び「あなた方は今どこの空を飛んでおられますか。純白のマフラーをなびかせて」と祭文奉読した。
ふるさとの維新の英傑、高杉晋作の遺書「われ死して郷土の鎮守とならん」を挙げ、「この内憂外患の時、私はあえて第三龍虎隊の皆さんの鎮魂ではなく、祖国の鎮守たれと冀(こいねがう)のである」と結んだ。
出席者全員で菊の花を献花した後、宮古で居酒屋を経営している山本小太郎さんとゆかりさんが三線とギターで「島唄」を歌い献本式を締めくくった。
古川さんが献本した「君死に給ふことなかれ」は、宮古島から特攻出撃した神風特別攻撃隊・第三龍虎隊の物語。
隊員7人は、太平洋戦争末期の1945年7月28日、250㌔爆弾を搭載し、宮古島から沖縄本島沖の米艦隊を目がけ飛び立ち、敵船に体当たりして散った。
「君死に給ふことなかれ」は、山口新聞に「木枯し帰るところなし」とのタイトルで、2014年7月~12月まで連載された。