身近な子供に関心を/震撼 3歳児暴行死(下)
地域で見守る環境大事
3歳の娘に暴行を加え死亡させた事件。関係機関の連携不足が指摘されているが今後、専門家による検証委員会が、対応が適切だったかを調査することになる。相談員や元家庭児童支援員は、行政だけの取り組みでは弱いと指摘する。「身近な子供に関心を示す、地域の養育力を社会全体で引き上げることが必要」と話す。
■虐待通報は近所が多い
市児童家庭課が対応した2014年度の児童虐待件数は38件で、過去7年間で最多となった。
対応した38件のうち、子供が泣き止まないなど近所からの通報(13件)と、学校からの連絡(9件)が全体の58%を占める。
いかに周囲が目を配り、危機を予測しその防止と回避につなげるかがカギを握っている。
元家庭児童支援員の男性は、地域の人はもとより、祖父母や親戚による子育ての支援が昔と比べて弱くなっていることを指摘する。「事件が起こってから、急に対策を取ろうとしても遅い。普段からのコミュニケーションが重要」と言う。
■DV、年々増加傾向に
今回の事件は、妻が容疑者からドメスティック・バイオレンス(DV、夫婦間などの暴力)の被害を日常的に受けていたことも明らかになった。死亡した子供が身体的虐待に加えて、心理的虐待を受けていたことも浮き彫りになった。
元男性教諭は以前から、「宮古では家庭内の問題を表に出すのは恥とする意識の傾向がある」と指摘していた。このため、家庭問題を周囲に知られたくないという気持ちが強く働く可能性も否定できないと言う。
宮古島市における配偶者からの暴力による相談件数(14年度)は延べ379件で、年々増加傾向にある。市は今後、相談件数に応じた相談員の増員を検討する方針だ。
元家庭児童支援員は「行政もあらゆる面でてこ入れしているが、大きな事件が発生している現状を見ると、取り組みは弱いと言わざるを得ない。DVや児童虐待は子供の成長に大きくかかわる重大な問題」と述べ、行政だけでなく普段からの周囲の見守る目が大切だと訴える。
■支援施設の周知必要
児童家庭支援センター「はりみず」は開設3年を迎えた。
相談員2人と心理療法対応職員1人を配置し、子供に関するさまざまな相談を受けている。開所当時は、年間延べ1000件を超える相談があり、口コミなどを通して子育て支援の窓口として認知されるようになった。
女性相談員は「家庭の中に入っていくのは難しいが、相談を受け訪問回数を重ねるうちに心を開いて話をする人もいる」と話す。「ただ、そういった人も相談や助言指導などを実施する窓口を知って行動する人。中にはどこに、誰に相談して良いのか分からない人もいる」と述べ、施設などの所在地や役割などを周知する必要性を強調した。
子育ては、周囲の協力があってこそ成り立つもの。女性相談員は「昔は地域の中で子供を見守る環境ができていた。現代はそれが希薄になっている。もっと身近な子供へ関心を持つことが必要」と話した。