〝見切り発車感否めず〟/ドーム型施設
一部与党からも運営を懸念
当初計画では30億円だった、ドーム型スポーツ観光交流拠点施設の事業費。これが43億円まで膨れあがった。14日の市議会臨時会で、野党などは「宮古に必要な施設なのか」と見直しを求め、身の丈に合った事業展開を進めるよう指摘。一部与党からも、施設内でできるスポーツが限られていることや、5000人収容のイベント開催ができるのかなど、費用対効果に疑問の声が上がった。事業費に充てる次年度の一括交付金も現時点では確定しておらず、見切り発車感は否めないまま、同施設の建設工事請負契約は賛成多数で可決された。
■事業費なぜ膨れあがったか
基本計画時点では、事業費は約30億円だった。ただ市は、用地購入費や委託費、敷地造成費は含まれていないとし、これらを含めた約35億円が当初計画だと主張する。
事業費は14年10月時点で40億円超え。実施工事の発注準備で、単価などの見直しを行ったことが理由とした。
さらに工事発注に向け、15年7月には県の単価見直し通知に基づき単価の入れ替えを行った結果、43億円を超える膨大な事業費になった。
建築資材の高騰や人件費の増加、消費費が5%から8%に上がったことなど、社会情勢の変化を踏まえた増額であることを挙げている。
亀濱玲子氏は、他市の類似施設の総事業費が約8億円だったことを示し、事業の再考を求めたが、友利克企画政策部長は進入路や造成工事など、立地条件が違うことを挙げ「それほど大きな建設費の違いはない」と答弁した。
■現時点ではフットサルとゲートボールだけ
与党の垣花健志氏は「43億円掛けてスポーツ交流施設をつくりながら、フットサルとゲートボールだけしかできないのか」と疑問を投げ掛けた。
友利部長は、「野球は面積的に難しい。バレーボールとバスケットボールも当初から想定してない」と述べ、床を使うスポーツは、既存の体育館を使用するなどドーム型施設との棲み分けをしていくとした。
「基本的には屋外でできるスポーツについては、十分対応して受け入れていく」と述べたが、フットサルとゲートボール以外の具体的なスポーツの名称は明らかにしなかった。
友利部長はまた、関係部署の課長で構成する「有効活用検討会議」を設置したことを報告。「保育園児から高齢者までの幅広い利用が可能な施設ということを共通認識にして当たる」などと設置理由を述べたが、野党などからは「順序が逆だ」との声が上がった。
■一括交付金は不透明
同施設の事業費は一括交付金を活用。市振興開発プロジェクトによると年度は16億5000万円、次年度は18億円を充てる予定だ。
亀濱氏は、旧上野清掃センター焼却炉の撤去が当初、一括交付金を充当する方針だったが、認められず解体事業費2億2000万円を市の一般財源から持ち出した経緯を指摘。次年度の一括交付金が現時点では不透明なことから、市に対し確保できなかった場合の対応を求めた。
友利部長は「一括交付金は県や国と毎年調整している。懸命な努力をして確保に努めていきたい」と述べるにとどめた。
(平良幹雄)
ことば
スポーツ観光交流拠点施設 久貝、松原両自治会から用地を購入し宮古空港東側に建設。駐車場を含む総敷地面積約4万1576平方㍍、建築面積5952平方㍍。アリーナ面積は約3600平方㍍、収容人数は約5000人で、人工芝にフットサルコート2面、ゲートボール場6面の配置が可能。駐車スペースは約500台。音楽イベントの開催も想定し、県内のドーム型施設としては初の音の反響を防ぐ吸音板も設置する。災害時には空港からの一時避難所となるよう計画されている。