子牛生産 安定継続に懸念広がる/TPP大筋合意で農家
政府に不安払しょくの政策要望/JAが説明会
JA沖縄中央会は14日午前、日本や米国など12カ国が大筋合意した環太平洋連携協定(TPP)交渉の妥結内容を宮古の畜産農家や関係者に説明した。農家からは、輸入牛肉の関税を段階的に引き下げることで、国内産牛肉全体の価格が下落することを懸念。「子牛の生産地として今後、安定した生産が継続できるのか」と不安を口にし、政府に10年、20年先を見据えた子牛の安定生産に向けての法制化を要望した。
説明会はJAおきなわ宮古地区本部ホールで行われ、約60人が参加した。農林水産省生産局畜産部の谷村栄二食肉鶏卵課長が、TPP協定交渉の合意内容や現在の施策などについて、畜産関係品目に絞って説明した。
西銘恒三郎衆院議員も出席し、農家の声に耳を傾けた。
説明会では▽輸入牛肉にかけている現在38・5%の関税を段階的に引き下げ、16年目以降は9%とする▽牛肉、豚肉いずれも国内生産者を保護するため、輸入量が一定量を超えると関税を引き上げるセーフガード(緊急輸入制限)措置を発動する-などが説明された。
これに対し出席した畜産農家からは「関税の引き下げにより、長期的には日本の牛は米国、豪州からの輸入牛肉と競合することになる。肉用種を中心に、国内産牛肉全体の価格が下落するという懸念を受けた」とし、特に宮古島は、子牛の生産を主としている地域であることから、「肉用牛子牛の産地として、安定した生産が継続的にできるのか」などと不安の声が上がった。
また、「16年目以降は9%とする関税の引き下げまでに、足腰の強い農家をつくることが必要。そのためには、高効率の緊急支援対策事業を打ち出して後継者を確保することが大事」などとTPPの影響を最小限にとどめるためにも、政府に思い切った措置を取ってほしいと要望した。
谷村課長は「自由化の非常の厳しい波を越えて、一定の生産量や国内消費の中でもシェアを維持してきた我が国の牛肉の生産状況は、今後とも維持していかなければいけない」と指摘。その上で「一番競合が懸念されるのは乳用種ホルスタインの雄。黒毛の和種は、豪州の牛肉とある程度の棲み分けができている」と述べ直接競合の可能性は低いとの見通しを示した。
「有能な雌牛が非常に少なくなってきており、それに伴って子牛の生産量が減っているという危機感はTPP以前から強く感じている」と述べ、肉用牛繁殖基盤の強化に取り組む考えを示した。
西銘氏は日本がコメ市場を解放した1993年のウルグアイ・ラウンド交渉妥結後に政府が講じた事業費約6兆円の国内対策を引き合いに出し、「当時は6兆円ありきという政策になってしまった。森山裕農水大臣は、現場の声を積み上げて結果として金額はいくらにするという答弁をしている。生産農家からの『これはできないのか』という声が積み上げられることになる」と述べ、現場からのさまざまな意見を反映させていく考えを示した。
同説明会は宮古地区のほか、13日は沖縄本島で、14日午後からは八重山地区でも行われた。